確定申告が必要な基準額
確定申告とは毎年2月の中旬から3月中旬にかけて行われている手続きのことです。前年の1月1日から12月31日までの所得を税務署に申告して、必要な税金を納めなければなりません。
給与所得のみの方は、会社で年末調整という形で納税者に代わって手続きしてくれますが、副業している場合は自身で確定申告をしなければなりません。
副業の所得が20万円以上
主な給与以外にも副業をしており、その所得合計が20万円以上の場合は確定申告をしなければなりません。副業にはアルバイトなどの給与所得が発生するもの以外にも、雑所得や不動産所得などといった他の所得も含まれます。
基本的に、会社からもらっている給与所得及び退職所得以外にも所得が発生し、その合計額が20万円以上の場合は、確定申告が必要と考えておきましょう。
経費は引いていい
所得を計算する上で、『もらった額=所得』ではないということを覚えておきましょう。実は所得を計算する時に「その所得を得るために必要だった経費は引いてもいい」ことになっています。
そのため、確定申告をする際にかかった経費を正確に計算するために領収書などは必ず保管しておいてください。領収書には保存義務があるので、確定申告が終わったからといって捨てないようにしましょう。
保存期間は白色申告の場合、5年、青色申告の場合は7年です。白色申告の場合でも、できれば7年間保存しておくことが望ましいでしょう。領収書を保存する上で、注意すべき点があります。
それは「原則として紙で保存しなければいけない」という点です。国税庁が示している方針に明記されており、オンラインショッピングなどで取引をした場合の領収書も印刷して保存しなければいけません。
しかし、所轄の税務署長に対し申請書を提出し、承認を得た場合に限り電子での領収書保存が認められています。提出期限は保存を開始する日の3カ月前です。
榎本希
本業以外の収入がある場合の確定申告が必要な所得の目安は20万円となります。
この所得は「売上-経費」となるため、例えば30万円報酬を得たが経費として10万円かかったというような場合には所得は20万円となります。
給与として副業の報酬を得ている場合には給与の支給金額が20万円以上あるならば確定申告が必要です。
確定申告が必要な場合・必要でない場合
経費を引いた結果赤字だった場合
副業における確定申告の要件は「所得が20万円以上」なので、副業の収入から経費を引いた結果赤字ならば、確定申告は必要ありません。ただし、副業を事業所得として考えるなら話は別です。事業所得の場合、赤字であれば給与所得との損益通算が認められますので、ケースによれば還付金が生じます。
雑所得は損益通算できませんので、赤字にならなかったものとされます。事業所得か雑所得かの判断は「常識的に考え、社会通念上、事業といえるかどうか」で判断される部分が多く、税務署の判断によって決まるので、注意が必要です。
20万円以下でも確定申告が必要な場合
医療費控除や住宅ローン控除など控除を受ける場合は副業の所得が20万円以下でも確定申告は必要です。医療費控除は1年間に支払った額が10万円を超えている場合にのみ申請・適用ができます。住宅ローンを組んだ場合も初年度に限り確定申告が必要です。次年度以降は年末調整で行えます。
専業で38万円以上(副業者は対象外)
専業主婦や学生など特に収入がない人が収入を得るようになった場合、38万円以上稼いでしまうと確定申告が必要になります。アルバイトなど給与所得の場合、基礎控除38万円に加え給与控除65万円の合計103万円までが非課税です。
しかし、雑所得の場合は給与控除が適用されず、基礎控除の38万円のみ適用なので、所得が38万円を超えた場合は納税の義務が生じます。したがって、確定申告をして税金を納めなければなりません。
2020年度申告分より基礎控除は48万円に引き上げられ、給与控除は55万円に引き下げられます。
榎本希
給与所得としての副業がある場合、源泉徴収を複数もらうこととなり、すべての給与金額から給与所得控除を引いた金額が給与所得となります。
事業所得・不動産所得・雑所得は収入から経費を引いた金額が各所得となり、そこから10万円~65万円の控除を引きます。
なお、不動産所得の場合事業規模と認められる場合には事業所得となります。
その他、不動産譲渡を行った場合には「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額」、株式譲渡を行った場合には株式は上場株式と一般株式に分かれますが計算式は「総収入金額(譲渡価格)-必要経費(取得費+委託手数料等)=譲渡所得等の金額」となります。
各所得の計算方法
確定申告は、あくまでも収入金額ではなく所得の額に応じて必要性の有無が異なります。所得の計算は、原則として「収入から経費」を差し引くことで求められますが、所得区分によっては一部計算方法が異なるケースもあります。
給与所得がある場合(アルバイトなど)
副業でアルバイトをして給与所得がある場合、基本的に確定申告が必要です。所得の計算方法は、「主たる給与+副業の給与-給与控除」で求められます。確定申告の際には、主たる給与の源泉徴収票と副業の源泉徴収票の2枚が必要です。
もし副業の源泉徴収票がもらえていない場合は、副業先にお願いをして源泉徴収票を出してもらってください。それでも出してもらえない場合は、税務署に行き「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することで、税務署から副業先に源泉徴収票を発行するように指導が入りますので、相談してみましょう。
なお源泉徴収票は「給与所得の場合にのみ」発行されるもので、業務委託契約など雇用形態によってはそもそも源泉徴収票が発行されないケースもあるので注意が必要です。
事業所得がある場合(アフィリエイトなど)
事業として得た収入がある場合、「収入から必要経費を差し引く」ことで事業所得を求められます。事業所得における必要経費には、売上原価以外にも家賃や土地代、減価償却費なども含まれます。業務上必要な費用はすべて必要経費にできますので、領収書などを保管しておいてください。
なお、ネットオークションやライターとして活動している場合、事業所得か雑所得のどちらで確定申告しようか迷うことがあるでしょう。先述の通り、事業所得かどうかは確定申告書を見て税務署が判断します。
もし不安なのであれば税務署に行って、事情を説明しどちらか分からないということを伝えれば、回答してくれます。また時間がない場合などは、税理士にお願いをして調べてもらうこともできるので不安ならば確定申告の前に対策を取っておくと良いでしょう。
譲渡所得がある場合(株式など)
株式などを譲った場合、譲渡額に応じて所得税が発生します。上場株式等に係る譲渡所得等と一般株式等に係る譲渡所得等の所得は「譲渡額-必要経費(取得費+手数料)」で求められます。取得費が不明な場合、売却金額(譲渡額)の5%を取得費相当額として計上することが認められていますので覚えておきましょう。
なお、土地や建物を譲り渡した場合の譲渡所得は一部計算方法が異なります。この場合の譲渡所得は「収入額 - (取得費 + 譲渡費) - 特別控除額」で求められます。譲渡費は仲介手数料など土地や建物を売る過程で発生した費用のことです。取得費は土地や建物を取得する際にかかった費用ですが、株式同様に不明な場合は売却価格の5%を取得費として計上できます。
雑所得がある場合(クラウドソーシングなど)
雑所得であれば、収入から必要経費を差し引くことで所得金額を求められます。雑所得も他の所得同様、「その収入を得るのに必要な費用だけ」を必要経費として計上できます。クラウドソーシングで収入を得ている人にありがちなのは、携帯電話の料金などを経費にできるのかという疑問です。
国税庁は、「個人の業務において1つの支出が家事関連費になる場合、業務遂行上、必要であったことが明らかに区分できる場合のみ計上できる」と見解を出しています。しかし、携帯電話料金などは明らかに区分できません。そのため、業務で使ったと思われる割合で、個人使用と分けてしまいましょう。
例えば、携帯料金が1万円だと仮定し、業務で3割程度使ったとします。このケースならば、1万円の3割、つまり3,000円が必要経費に計上できます。客観的にみて妥当と思われる割合で按分すると必要経費として認められることも多いので、覚えておけば役に立つのではないでしょうか。
榎本希
給与所得としての副業がある場合、源泉徴収を複数もらうこととなり、すべての給与金額から給与所得控除を引いた金額が給与所得となります。
事業所得・不動産所得・雑所得は収入から経費を引いた金額が各所得となり、そこから10万円~65万円の控除を引きます。
なお、不動産所得の場合事業規模と認められる場合には事業所得となります。
その他、不動産譲渡を行った場合には「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額」、株式譲渡を行った場合には株式は上場株式と一般株式に分かれますが計算式は「総収入金額(譲渡価格)-必要経費(取得費+委託手数料等)=譲渡所得等の金額」となります。
まとめ
普段会社からの給与だけで生活している場合、確定申告は縁遠いものでしょう。副業を始めて、初めて関わるという方も多いです。しかし、確定申告は納税の観点から欠かすことのできないものです。
最近は経費の精算ツールなど、便利なツールがたくさんあります。ツールを賢く利用して、素敵な副業ライフを送りましょう。