勘定科目内訳明細書とは?役員報酬の書き方や簡素化について解説

会社は、会計年度末に確定申告を行い税務署に書類を提出します。この際提出する書類の中に『勘定科目内訳明細書』というものがありますが、この書類はどのようなものなのでしょうか。また、内訳明細書の簡素化や役員報酬の記載方法についても解説します。

勘定科目の内訳明細書を知ろう

まずは勘定科目内訳明細書の定義や記載方法など、基本的な事柄を見ていきましょう。

勘定科目内訳明細書とは

勘定科目内訳明細書とは、『賃借対照表』や『損益計算書』に記載されている勘定科目の内訳を示している書類の一つです。決算書類として扱われ、「法人税法施行規則第35条」により、確定申告の際に税務署への提出が義務付けられています。

提出日は、その他の必要書類と同じで、決算日の翌日から2カ月以内です。3月31日が決算日であれば、5月31日までに提出する必要があります。

勘定科目内訳明細書を提出する理由は、申告書類の詳細が正しいかどうかを税務署が確認しなければいけないからです。不透明な取引があると、税務署のチェックが入ります。その透明性を保つために提出することが求められます。

この勘定科目内訳明細書には『16の内訳書』と呼ばれるものがあり、該当する会社はこの書類を作成しなければなりません。

勘定科目内訳明細書の記載要領

勘定科目内訳明細書へは、仕訳を計上する時に日付・摘要・勘定科目・金額の4項目を正確に記載します。

会計ソフトがない時代には全て手計算で他の書類に書き写していましたが、現在では、会計ソフトを使うと『総勘定元帳』に自動的に集計されるものもあるでしょう。

そして勘定科目ごとに分類されるので、簡単に勘定科目内訳明細書を作成できるようになりました。

16の内訳書もあることを知ろう

勘定科目内訳明細書を作成する時には、以下に示す16種類の内訳書を参考にします。

  1. 預貯金等の内訳書
  2. 受取手形の内訳書
  3. 売掛金の内訳書
  4. 仮払金の内訳書・貸付金及び受取利息の内訳書
  5. 棚卸資産の内訳書
  6. 有価証券の内訳書
  7. 固定資産の内訳書
  8. 支払手形の内訳書
  9. 買掛金の内訳書
  10. 仮受金の内訳書-源泉所得税預り金の内訳書
  11. 借入金及び支払利子の内訳書
  12. 土地の売上高等の内訳書
  13. 売上高等の事業所別内訳書
  14. 役員報酬手当等及び人件費の内訳書
  15. 地代家賃等の内訳書-工業所有権等の使用料の内訳書
  16. 雑益、雑損失等の内訳書

この中から預貯金等の内訳書と売掛金の内訳書について簡単に解説しておきます。

預貯金等の内訳書では、取引金融機関別に記載することはもちろん、預貯金の種類別に記載することを忘れないようにしましょう。また、通帳の名義が会社の代表者になっているかも確認しましょう。

売掛金の明細書については、科目欄に記入します。相手先別の期末残高が50万円以上の場合は個別で記入することになりますが、その他は一括で記入して良いことになっています。

詳しくは国税庁の「勘定科目内訳明細書及び法人税申告書別表等をCSV形式で作成する場合の留意事項等」でご確認ください。

出典:勘定科目内訳明細書及び法人税申告書別表等をCSV形式で作成する場合の留意事項等 |国税庁

勘定科目内訳明細書の役員報酬の書き方

では、勘定科目内訳明細書における役員報酬の書き方について紹介しましょう。役員報酬と一般社員の人件費では記載方法が違いますので、把握することが大切です。

役員報酬手当等の内訳

役員報酬手当等の内訳は以下の通りです。

  • 役職名  …『代表取締役社長』『専務取締役』など該当役員の役職名を記入します。
  • 担当業務…『営業部門担当』など該当役員が特定の担当業務を持っている場合は記入します。
  • 氏名・住所…該当役員の氏名・住所を記入します。
  • 代表者との関係…代表者の親族関係にある人物が該当役員の場合は記入します。親族関係がない場合は『縁故なし」と記入します。
  • 常勤・非常勤…該当役員が常勤役員か非常勤役員かを記入します。
  • 役員給与計…退職給与以外の役員への報酬の総額を記入します。
  • 使用人職務分の給与…該当役員が使用人を兼務している場合は、使用人職務分の給与の額も記入します。
  • 定期同額給与…月額報酬など、一定の期間ごとに同額が支払われる額を記入します。
  • 事前確定届出給与…事前に提出した書類の金額に基いて支給された給与を記入します。
  • 退職給与…該当役員が期間内に退職した際に支払われた退職金の支給額を記入します。

人件費の内訳

勘定科目内訳明細書においては、人件費は以下の通りに分けられます。

  • 役員報酬手当 役員報酬の総額を記入します。この時、使用人職務分は含まず記入します。
  • 従業員の給料手当 役員報酬とは別に、従業員の給与や賞与は『一般管理費』で処理します。この時、役員の使用人職務分はこちらに記入します。

勘定科目内訳明細書を用意するには

それでは勘定科目内訳明細書は具体的にどのように作成すれば良いのでしょうか。かつては文房具屋で書式に合わせた書類を購入して記入しておくのが一般的でしたが、最近は以下の2種類の方法が主流となっています。

国税庁のホームページからダウンロード

勘定科目内訳明細書と法人税申告書別表等については、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。詳細は「勘定科目内訳明細書及び法人税申告書別表等(明細記載を要する部分)のCSV形式データの作成方法」を確認すると良いでしょう。

『国税庁』ホームページ

会計ソフトを利用する

上記の通り、勘定科目内訳明細書は国税庁のホームページでダウンロードできますが、多くの会社で会計ソフトを導入しています。

会計ソフトを利用すると、項目を計上するだけで様々な決算書類が自動計算されますので、簡単に勘定科目内訳明細書もまとめることができます。

勘定科目内訳明細書の簡素化

続いて、勘定科目内訳明細書の簡素化について解説します。この簡素化については、2018(平成30)年から2020(令和2)年にかけて改正が進んでいるものですので、最新の情報を把握しておく必要があります。

法令改正について

法人税の申告についての法令改正によって、2019(平成31)年4月1日以後に終了する事業年度から勘定科目内訳明細書が簡素化されることになりました。2019年5月現在、すでに簡素化が行われた項目は以下の通りです。

  1. PDF形式のイメージデータで送信された添付書類の原本(紙)は保存する必要がなくなりました。
  2. 土地収用証明書等は添付する必要がなくなりました。
  3. 勘定科目内訳明細書の記載内容が簡素化されました。
  4. 法人税申告書別表・勘定科目内訳明細書のデータ形式が柔軟化されました。
  5. e-Tax(電子申告)の送信容量と受付時間が拡大されました。
  6. 連結納税の承認申請関係書類の提出が一元化されました。
  7. 法人番号を入力すると法人名称等が自動反映されるようになりました。

以上のような法令改正がありましたので、次回の書類提出の際には注意するようにしましょう。また、今後も法令改正が行われる可能性があるので、改正に基づいて必要書類を用意するようにしてください。

記載省略基準の柔軟化

上記の3.勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化について、売掛金や買掛金のように記載量が多くなる勘定科目については、記載件数が100件を超える場合には上位100件のみを記載すれば良いことになりました。

記載単位の柔軟化

また、勘定科目内訳明細書の記載単位も柔軟化されました。受取手形の内訳書のように記載単位を取引先としている勘定科目については、支店・事業所別の総額を記載する方法になっています。

記載内容の削除

これらの内容をまとめると、以下のような記載内容になるため削除する項目が発生します。

例えば、売掛金の内訳書において、これまでは期末現在残高が50万円以上であれば全て記載し、取引先単位での名称・所在地などを記載するのです。

しかし、今後は記載すべき相手先が100件を超える場合は、 期末現在残高が50万円以上もしくは上位100件の記載でよくなり、取引先単位での記載もしくは支店・事業所別の記載が可能になりました。

この記載内容の削除については、買掛金や受取手形の内訳書も同様の処理にすれば良いでしょう。

出典:勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化|国税庁

勘定科目内訳明細書をCSVで提出可能

勘定科目内訳明細書については、2018年の税制改正によりその他にも変更がありましたので、以下にまとめておきます。

税制改正により電子申告が義務化

2018年度の税制改正において、大法人に限り法人税等の電子申告が義務化されました。そのため、電子データの提出をするにあたり、利便性を向上させる施策が順次実施されています。

その一つが、上述した勘定科目内訳明細書の簡素化です。ちなみに、電信申告の義務化は大法人のみですが、勘定科目内訳明細書の簡素化については中小企業も対象になっています。

また、国税庁は2019年4月以後に終了する事業年度の申告から使用できる、新たな勘定科目内訳明細書をすでに公表していますので、チェックしておきましょう。

出典:勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化|国税庁

勘定科目の内訳明細書をCSVで提出することが可能に

これまでは受付されなかった、勘定科目内訳明細書のCSVファイルによる提出が可能になりました。これまではエクセルファイルのみの提出でしたが、電子申告の義務化によって改正されました。

国税庁のホームページには、CSV形式に変換するためのエクセル形式のフォームを「勘定定科目内訳明細書及び法人税申告書別表等(明細記載を要する部分)のCSV形式データの作成方法」で公開していますので、併せてチェックしておきましょう。

出典:勘定定科目内訳明細書及び法人税申告書別表等(明細記載を要する部分)のCSV形式データの作成方法|国税庁

まとめ

このように、勘定科目内訳明細書については法令改正により変更になったことがたくさんありますので、最新の情報を入手しておく必要があります。

また、会計ソフトのおかげで勘定科目内訳明細書の作成の時間・労力は大幅に削減されたとはいえ、処理すべき項目が多い場合にはかなりの負担となりますので、決算日までに余裕を持って処理を進めておきましょう。

そのためには、申告の期限に合わせるのではなく計画的な計上スケジュールを組む必要があります。

日常的に勘定科目内訳明細書を進めておくことが、申告時に慌てずに済む秘訣です。法令改正のルールに合わせて、次回の決算に向けて余裕を持って業務を進めましょう。

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