業務委託における経費精算の方法。負担の考え方や認められる経費

副業やフリーランスとして、業務委託を請け負うのであれば、一定条件を満たすと確定申告をする必要があります。きちんと確定申告するためには経費を正しく清算しなければいけません。認められる経費や確定申告について紹介します。

業務委託と経費について

『業務委託』における『経費』の考え方を理解しましょう。

費用負担の考え方

業務委託において、原則として契約の履行の費用は、受託者の負担になります。業務を遂行するために必要な費用は原則として受託者の負担になるというわけです。

一方で、委託者の業務の履行に関する費用は委託者の負担となり、例えば報酬の銀行振込手数料が挙げられるでしょう。

ただし、例外として委託契約・準委託契約における業務の履行に関する費用は委託者の負担となります。委託者は受託者から請求があれば、前払いで費用を負担しなければいけません。あるいは、受託者が必要な費用を立て替えた場合は、後払いで支払います。

後々トラブルが起こらないようにするために負担する費用に関しては『業務委託契約書』に記載して明確にしておくことをおすすめします。

経費精算の方法

『経費精算』とは、業務遂行のために使った経費を項目ごとに仕分けして、それを立て替えた者に払い戻す一連の経理業務のことをいいます。

業務委託の場合であっても交通費や取材中の飲食代は委託者が負担する場合が多いです。こういった場合の費用は一旦受託者の事業の経費として処理します。

そして、保存しておいた領収書を委託者に提出して負担した費用を売上に加算することによって請求するという流れです。なお、請求書原本を委託者へ提出するときはコピーをとっておくとよいでしょう。

売上と経費が同額計上されるので利益は同じになるのがポイントです。しかし、消費税の納税義務者を判定するときの『課税売上高』に影響を与えるので、売上が1000万円前後の場合は注意しましょう。

榎本希

業務委託で仕事を行う場合には仕事に必要な経費の負担は原則として受託者であるフリーランスが支出し、経費として会計記帳することとなります。

しかし、例えば宿泊を伴う取材や交通費などを委託者が負担する場合には、一旦受託者であるフリーランスが立て替え払いを行い、後に請求書を委託者に送付し精算するという形になります。

その際の請求書については、原本を委託者に送付し、自身はコピーを保管するようにしましょう。

また、契約の際に経費の扱いについてもしっかり話し合って契約書にその内容を記載しておくことも大切です。

認められる経費と経費率について

副業やフリーランスで活動するのであれば、何が『経費』にあたるのか、『経費率』とは理解しておく必要があります。

認められる経費とは

認められる経費には、事業に関連した費用で、具体的には以下などが挙げられます。

  • パソコン関連商品
  • オフィス備品
  • 交通費
  • お客様に買ったジュース代
  • 取引先関連のお葬式の香典

例えば、領収書をもらえない交通費であっても、「いつ」「何のために」「どこからどこまで」「いくら」だったのかというポイントを押さえてメモに残しておくと証憑(しょうひょう)としての根拠になります。

お客様に買ったジュース代や取引先関連のお葬式の香典も経費と認められる可能性があるのは意外かもしれません。こちらも「いつ」「いくら」だったのかメモしておくとよいでしょう。

車両や家賃などの家事按分とは

経費にできるかどうかは、判断が分かれるときもありますが、とりわけ識別が難しいのが『家事按分』(かじあんぶん)でしょう。

家事按分とは、フリーランスが自宅を事務所としている場合、家賃や光熱費、通信費などの一部を経費として計上できることをいいます。

例えば、自宅兼事務所の家賃が月12万円だったとすると、その1/4を事務所としている場合は3万円を経費として計上できます。

ただし、賃貸であれば家賃から按分(あんぶん)して経費を計上できますが、持ち家の住宅ローンの元本は経費にはなりません。しかし、代わりに以下は按分して経費に計上できます。

  • 減価償却費
  • 住宅ローンの金利
  • 火災保険料
  • 固定資産税

また、1台の自動車をプライベートでも仕事でも使っている場合、ガソリン代や自動車関連費用を按分できます。

通信費やガソリン代に関しては月によっても使用割合が変動すると思います。その場合は、家事按分の割合を変えても問題ありません。

経費率と目安

事業別の経費率の目安を紹介します。

事業 パーセンテージ
卸売業 90%
小売業 80%
製造業 70%
飲食業 60%
サービス業 50%

自分の事業の経費率を把握して、参考にするとよいでしょう。あまりにも経費率が高いと、税務署から指摘を受けることになります。

経費計上を正しく行うために、領収書やレシートなどを保管してこまめに記帳しておきましょう。

出典:適正な経費の割合はどれくらい? | 京都の税理士|小杉將之税理士事務所 Q-TAX 京都下鴨店

榎本希

経費として認められる物には様々な物がありますが、業種によっても異なります。

また、プライベートと事業の線引きが難しい物も多いです。

例えばスーツ代などはプライベートと事業の区別がつきにくいため、判例では一般的には、個人的な家事消費たる家事費に属するとされています。しかし、職種に応じ一定の種類、品質、数量以上の被服を必要とする場合にはその被服費の支出は勤務についても関連するものとして家事費ではなく家事関連費であると解するのが相当であるとして必要経費となる余地を認めています。

家事按分の範囲を含め、経費として計上できる部分がわかりにくい場合には専門家にアドバイスをもらうのも1つの手段です。

業務委託と確定申告

業務委託を始めるとなると確定申告のことを考慮しなくてはいけなくなります。難しい印象を持っている人もいるかもしれませんが、しっかり理解しましょう。

確定申告が必要になるのは

確定申告が必要になるのは以下のようなケースなどです。

  • 会社員が副業する場合、所得が20万円超になった
  • フリーランスといった業務委託のみで生計を立てている場合、所得が38万円超になった
  • LINEスタンプやブログなどでの収入の場合、雑所得が20万円超になった

『控除』も関わってくるため、自分が確定申告の対象かしっかり確認しましょう。

源泉徴収について理解しよう

源泉徴収とは、給与や報酬を支払う者がその支払いをするときに予(あらかじ)め一定の税率で所得税を算出して差し引き、国に納めることをいいます。源泉徴収は給与や報酬を支払う者の義務です。

源泉徴収の対象となるのは、「原稿料」や「講演料」「弁護士や税理士などへの報酬料」など多岐に亘ります。

会社員なら年末調整で、最終的な税金額を調整することになり、源泉徴収として差し引かれた金額が返ってくることもあるでしょう。

榎本希

業務委託で仕事を行う場合、会社員が副業として行っている場合にはその所得が20万円以上になった場合には確定申告が必要となります。

本業がなく、専業主婦などが空いた時間に業務委託で仕事を行うケースや、個人事業主として業務委託で仕事を行う場合には基礎控除額である48万円以上の所得になった場合には確定申告が必要となります。

その他にも、医療費控除などを受ける場合には確定申告が必要となります。

まとめ

業務委託を始めようと思ったら、関連する経費や確定申告について理解を深めることは重要だといえます。

副業やフリーランスをするときに税金に関する不明点があればリサーチする習慣を身につけるとよいでしょう。どうしても不明点を解決できなければ税務署で相談することをおすすめします。

榎本希 [監修]

医療機関・医大の研究室にて長年勤務をした後、行政書士試験を受験。医療系許認可をメインに扱う行政書士として、行政書士のぞみ事務所を開業。再生医療関係の許認可・診療所開設・医療広告ガイドラインに基づく医療広告のチェック等の他、任意後見・契約書作成・起業支援を扱う。

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