副業でも経費は認められる?認められる経費や家事按分を理解しよう

働き方改革による副業の解禁で、副業の広がりが期待されています。副業で所得を得ると、確定申告の必要が生じることがあります。その際、副業にかかった費用は経費として認められるのでしょうか? 認められる経費や家事按分などについて解説します。

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経費について知ろう

副業による所得が年間20万円を超えると、確定申告の義務が生まれます。会社員の多くは源泉徴収を受けており、確定申告をした経験がない方もいるでしょう。

確定申告を怠ると、無申告加算税や延滞税などのペナルティーを課される場合もあります。納税には強く責任を自覚することが大切です。

副業で収入を得るための出費は、経費として認められるのでしょうか。また、どこまでが経費として考えられるのでしょうか。

経費が認められる所得

経費が認められるかどうかを知るためには、まず所得の種類について知る必要があります。まず、所得の分類について説明します。

税法上、所得は次の10種類に区分されています。

  1. 利子所得
  2. 配当所得
  3. 不動産所得
  4. 事業所得
  5. 給与所得
  6. 退職所得
  7. 山林所得
  8. 譲渡所得
  9. 一時所得
  10. 雑所得

原則的に、会社員が副業をする際に、経費が認められるのは、このうち次の三つです。

  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 雑所得

そして、会社員の副業の多くは、事業所得・雑所得の二つに当てはまります。これらに分類される副業であれば、経費が認められる可能性があるのです。

認められる経費とは

副業で認められる経費を具体的に確認するとなると、とても細かく見なければなりません。経費の内容は、多岐に渡っています。

所得税は適正に算出し、納付する必要があります。一方で、不必要に多く納付せず、節税を心掛けることも大切です。そのためには、経費への理解は欠かせません。

経費は『収入を得るために必要な支出』です。経費になる支出は、モノを買うだけではありません。依頼主や顧客と打ち合わせした時の飲食代なども経費として計上が可能です。

領収書などはきちんと保管

副業による支出を経費として計上する場合、その証拠となるものを保管しておかなければなりません。証拠書類は、5年間の保存義務があるので大切に保管しましょう。

領収書の保管期間は法人であれば7年、個人事業主であっても青色申告の場合は7年間の保管義務があります。白色申告の場合には5年間となります。

必要経費を支出したことの証拠書類には、領収書やレシートがあります。できるだけ宛名のある領収書が、証拠書類としては望ましいです。それを、月別・内容別に分けておくと、後で整理しやすくなるでしょう。

榎本希

事業所得・不動産所得・雑所得の計算は事業で得た「売上-経費」がその所得額となります。そのため所得を正確に計算するためにも、節税のためにも経費の管理は大切になります。

経費というとPC代や携帯代などを思い浮かべる方も多いかと思いますが、その他にも事業で利益を得るために使用した支出は経費となります。

交通費や取引先との会議の際に使用した飲食費も経費です。

何が経費になるのか、どこまでが経費になるのかを知ることが大切です。

主な経費と経費率について

経費について、できるだけ具体的に解説していきます。また、経費率についてもあわせて説明しましょう。

交通費や書籍など主な経費

経費にできるものの代表的なものは次の通りです。

副業の業種 経費の内容
物販 販売する商品に関する費用 販売する商品の仕入れ・商品の発送費用・商品を保管するための倉庫の賃料、など
取引先に関する費用 取引先との飲食代・お中元・お歳暮・香典・お祝金、など
広告費 ネット広告・チラシ作成および配布・紙媒体への広告、など
フリーランス 仕事に関する道具や備品 10万円未満のパソコン・カメラ・仕事机、など
通信費 電話代・インターネット代、など
不動産賃貸業 賃貸物件にかかわる税金 賃貸物件の固定資産税・不動産取得税、など
賃貸物件の光熱費 賃貸物件の水道代・ガス代・電気代 ※賃借人負担除く
外注費 管理会社への管理手数料、など
共通するもの 仕事に関係する雑費 文房具・仕事にかかわる書籍や雑誌、など
通信費 仕事用の携帯代、など
交通費 相手先への訪問・出張・調査、など
資料購入費 書籍・地図・文献、など

経費になる支出はとても細かく、明確に規定されているわけではありません。経費になるかどうかはしっかり検証し、必要なら税理士など専門家に相談しましょう。

経費率とは

副業でも必要経費が認められます。しかし、やみくもに経費を計上し、所得を小さく見せかけることは適正な行為とは言えません。

次第に副業の売り上げが伸びているにもかかわらず、過度な経費の計上で不自然に所得が低いと思われ申告も中にはあります。その場合、税務署が関心を寄せる場合もあるのです。

そのためには、『経費率』を頭に入れておくことが肝要です。経費率とは、収入に対する経費の割合のことです。『経費÷収入』で算出します。

この経費率について税務署も明確な基準は示していませんが、次の表にまとめたので参考にしてみてください。

事業別経費率
卸売業 90%
小売業 80%
製造業 70%
飲食業 60%
サービス業 50%

出典:適正な経費の割合はどれくらい? | 京都の税理士|小杉將之税理士事務所 Q-TAX 京都下鴨店

榎本希

経費はその業種によって項目の割合が異なるものです。

そのため、どの経費にどれだけのウェイトがあるのかは業種にもよります。

経費率については気になる部分であるかとは思いますが、税務署がチェックをするのは

・経費が適切に計上されているのか

・帳簿はしっかりつけているのか

・領収書やレシートはしっかり保管しているか

という点になります。

按分について知ろう

副業を自宅ですることを想定してみましょう。副業開始前は家庭としての場でしかなかった自宅も、副業を始めると仕事場にもなります。

建物以外にも、それまでは家族のためだけだったものもが、仕事で使用したり、事業に役立ったりするケースが出てくるのです。

そういったものを経費とするために『按分』について知っておきましょう。

家賃や車費用の按分とは

自宅と仕事場を兼ねている場合、一つの例として、家賃や電気代は『家事関連費』と呼ばれます。そして、この家事関連費は必要経費として計上できるのです。

また、自家用車も、副業のために使用するケースが生じることもあるでしょう。車に関する費用も、按分の対象にできます。

ただし、これらは家庭で使用する部分もあるので、経費として全額は認められません。そこで、副業の経費とするために、仕事にかかわる部分だけを『按分』します。これが『家事按分(かじあんぶん)』です。

家事按分の方法

家事按分の仕方には、経費率同様に、明確な決まりは示されていません。自宅で仕事をする上で、仕事量や仕事場スペースの応じた割合をまず自らが想定し、導き出します。

例えば、自宅が借家の場合は、家賃について家事按分の対象となります。しかし、持ち家について組んだ住宅ローンは、家事按分の対象外なので注意が必要です。

ただし、次のものは按分した上で必要経費として認められます。

  • 家屋の減価償却費
  • 住宅ローンの金利部分
  • 火災保険料
  • 固定資産税

それらは按分した上で必要経費として認められます。このように、家事按分も複雑な一面を持っています。

大まかな目安を次の表にまとめたので参考にしてみてください。詳しくは、税務署の職員に副業の状況を説明し、アドバイスをもらうのが適切な納税につながります。

家賃 仕事で使っている床面積の割合
電気代 使用時間・コンセントの数
電話代・インターネット料金 使用時間
車の減価償却費・ガソリン代、など 走行距離・仕事に使った日数

榎本希

個人事業主の場合、自宅兼事務所として事業を行う場合も少なくありません。その際に家事上と業務の両方にかかわるもの(家事関連費)がありますが、この家事関連費のうち必要経費とできるものは「取引の記録に基づいて、常務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。(国税庁HP「やさしい必要経費の知識」より)

家事按分などどこまでが経費としてできるかが自分ではよく分からない場合には税務署や税理士などに相談しましょう。

確定申告について

源泉徴収を受けている会社員には、『確定申告』は馴染みがない人もいるでしょう。しかし、副業を始めて一定以上の所得を得るようになると、税の確定・申告は義務となります。

副業で既定の水準以上の所得があるにもかかわらず、勤め先の源泉徴収だけで済ませていると、脱税の疑いが生じます。ですので、確定申告は適正に行うことが重要なのです。

副業の確定申告の必要性

副業を始めて所得が20万円を超えると、その人は確定申告をする必要があります。意図的に申告を免れると、事業者として無申告加算税などのペナルティーを課せられることもあるので、必ず申告しましょう。

所得と聞いて『収入』と混乱する人も少なくありません。『収入』とは、副業で得たすべての金額を指します。言い換えれば『収入=売上』と考えていいでしょう。

一方、『所得』は、収入から必要経費を差し引いた額のことです。つまり『収入-経費=所得』となります。

税額の計算方法

副業での所得が20万円を超えると、確定申告をして、所得税の納付をしなければなりません。その時の納付額確定の流れは、次の通りです。

  1. 所得金額を求める
  2. 所得金額-所得控除=課税される所得金額
  3. 課税される所得金額×税率=納める税金

この税額の算出方法は、税務署で無料配布される確定申告の手引き(HPからのダウンロードも可)の通りに行えば算出できるようになっています。

赤字の場合の注意

副業での事業所得が赤字になると、所得税の還付を受けられる場合があります。実際、副業の内容によっては、スタートしてから軌道に乗るまでは利益が出ないことも少なくありません。

この制度を悪用し、事業所得を意図的に赤字にして、給与所得と通算することで還付を受けるという行為で逮捕者も出ています。

背伸びをして赤字を黒字にする必要はありません。しかし、制度の抜け道には、税務署も不正を見逃さないように目を光らせています。確定申告を正しく行い、適正な副業に努めましょう。

榎本希

副業の所得が20万円以上の場合には確定申告が必要です。

副業がアルバイトなどの給与所得であれば給与額が20万円以上であれば確定申告が必要と分かりやすいですが、雑所得や事業所得や不動産所得の場合には所得の計算は売上金額ではありません。

「売上-経費」が所得となることに注意が必要です。

課税所得税金額は「売上-経費-各種控除」となります。

所得税金額は上記で計算した所得税金額に税率を掛けた金額です。

まとめ

副業には、いろいろなメリットがあります。培った技術や知識を世の中で役立てる、好きなことで誰かに感謝される、それを実感できたときには喜びが沸いてくるでしょう。

また、収入につながる点も、副業の大きな利点です。そのためにも、経費についてしっかりと意識を持って、賢い申告を心掛けてください。

榎本希 [監修]

医療機関・医大の研究室にて長年勤務をした後、行政書士試験を受験。医療系許認可をメインに扱う行政書士として、行政書士のぞみ事務所を開業。再生医療関係の許認可・診療所開設・医療広告ガイドラインに基づく医療広告のチェック等の他、任意後見・契約書作成・起業支援を扱う。

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