現金手渡しの副業収入の扱い
給与や報酬は銀行振り込みが一般的です。しかし短期のアルバイトなどの仕事では、働いた分の賃金を手渡しする企業もあります。現金手渡しの場合どのような扱いになるのか、税金面を中心に見ていきましょう。
かかる税金は銀行振込の給与と同じ
現金手渡しでも、所得税や住民税の徴収は行われます。税率は銀行振り込みと同様です。
複数のバイトを掛け持っている場合は、合計収入の金額によって税率が計算されることを覚えておきましょう。仕事ごとに個別に計算するのではなく、すべての仕事の給与の合計金額を基準にして、税金が計算されます。
給与を支払う側の処理
雇用する側は、給与の金額から源泉徴収をして、源泉所得税を差し引いた金額を支払います。それは現金手渡しであっても銀行振り込みであっても同様です。
仮に源泉徴収がされていなければ、労働者は確定申告をして、働いた分の税金を自分で納めなければなりません。
源泉徴収をする
源泉徴収とは、年間の所得にかかる税金をあらかじめ事業者の方で給与から差し引くことを言います。
従業員を雇っている会社や個人事業主は、給与を支払う際には、給与から源泉徴収を行わなければなりません。仮に源泉徴収がされていない場合は、税金が支払われていないことになってしまい、従業員は個別に申告を行う必要があります。
給与支払報告書や支払調書を提出
事業者側は、税務署に給与支払報告書や支払調書を提出する義務があります。ただし、この義務は必ず発生するわけではなく、報酬が一定金額以上だった場合にのみ提出する書類です。義務が生じる金額は、職業によって違うので、あらかじめ確認しておきましょう。
所得税法231条に「金額その他必要な事項を記入した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない」と規定されています。そのため、事業者側は給料明細の発行を行わないと違法となる可能性もあります。
榎本希
給料の支払は銀行振込が一般的ですが手渡しで支払われる場合もあります。
税金面で見た場合、支払方法が手渡しであっても銀行振込同様の扱いになります。
給料を受け取る側は、給料と一緒に給料明細が入っているかを確認しましょう。
給料を支払う側は給料明細を作成し、給料と一緒に渡す必要があります。
確定申告が必要な場合とは
副業において確定申告は、必ず行わなければならないわけではありません。確定申告が必要な場合について、詳しく解説していきます。
副業の所得が20万円を超えた場合
国税庁のガイドラインでは、給与所得以外の所得が20万円以下であれば、確定申告は必要ないと定めています。もう少し具体的に見ていきましょう。
例えばフリーランスとして開業して事務所を構えている場合、デザイン料やライティングの原稿料は『事業所得』となります。また、個人事業主でない副業で得た金額は『雑所得』として計上されます。この二つの所得については20万円以下の場合は申告が不要です。
著述家や作家以外の人が受け取る原稿料は雑所得となります。
20万円を確定申告が必要なラインとして覚えておきましょう。
赤字でも確定申告をするメリット
副業のために購入した設備等によって赤字になってしまった場合でも、確定申告はしておくようにしましょう。
その理由は、個人であれば3年間、赤字を繰り越すことができるからです。例えば1年目に100万円の赤字、2年目は50万円の黒字だった場合、1年目に確定申告をしておけば、2年目はマイナス50万円となるため、税金を払わなくていいことになります。
ただしこれは『青色申告』をする手続きを済ませていることが前提条件です。青色申告は白色申告と比べて控除額が大きいというメリットもありますので、赤字でも青色申告に切り替えることを検討しましょう。
出典:赤字になったら?確定申告は必要?|セゾンファンデックス
榎本希
【補足】
ライターの場合専業のライターとして行っている場合には事業所得となりますが、副業の場合には雑所得となります。ただし、原稿料という名目で報酬が支払われて以内場合もあります。
原稿料での収入の場合は事業所得となるか雑所得となるかわかりにくい部分でもあるので税理士等の専門家に相談をしてみるとよいでしょう。
【アドバイス】
個人事業主の場合には赤字であっても確定申告をすることで得られるメリットがあるため確定申告をすると良いです。
また、副業所得が20万円以下であっても副業の報酬が原稿料や講演料などの場合には源泉徴収がされている場合があるため、確定申告をすることで過払いになった所得税が還付されるケースもあります。
現金手渡しでも正しく確定申告しよう
現金手渡しで報酬をもらうと、入金記録が残らないためにそのまま確定申告を忘れてしまう人もいるかもしれません。しかし、確定申告をしないとさまざまなリスクが発生します。
どのようなリスクがあるのかを見ていきましょう。
無申告は発覚する可能性が高い
無申告は高い確率で発覚します。
なぜかというと、報酬を支払った事業者側がきちんと給与支払報告書や支払調書を提出していれば、記録が税務署のデータに残るからです。報酬を渡した側の確定申告から発覚する場合もあります。
他にも、個人事業主や会社には税務署からアンケートが送られてきて、そこには取引先などの情報を記載します。そういったところから調査が入り、発覚してペナルティをもらう人が少なくないのです。
追徴課税のリスクもある
無申告だけでなく、期限内に申告がなかった、または申告はされているものの金額が少ないといった場合にかかるのが『追徴課税』というペナルティです。
追徴課税は、本来支払うべきだった税額に加えて、10~25%程度がさらに加算されます。
さらに書類の改ざんといった悪質な不正行為となると、『重加算税』という、40%にもなる重い税金が課されてしまいます。
悪質な場合には重加算税だけでなく刑事罰の対象にもなります。
榎本希
現金手渡しの場合には確定申告をしなくてもバレないと思うかもしれませんが、給料に支払側には給料を支払ったという証明がありますので発覚する可能性は高いです。
確定申告の必要があるにも関わらず無申告の場合は脱税となります。追徴課税が課されるだけでなく、悪質な場合には刑事罰の対象にもなりますので確定申告はしっかり行うようにしましょう。
まとめ
副業で稼いだお金は、銀行振り込み・現金手渡しにかかわらず税金に関しては同じ扱いです。
会社によっては、手渡しで報酬が支給されるケースがあるかもしれません。口座に記録が残っていなくても、取引先の申告などで、報酬をもらった記録は税務署が把握しています。
副業が20万円を超えた場合は、確定申告を行うことが義務づけられていますので、必ず行いましょう。