業務委託と確定申告について
業務委託で報酬を受け取ると、所得税額を確定申告で確定し、納税することになります。ただし、確定申告が必要ないケースもあります。
確定申告が必要な条件と、手続きの流れを知り、正しく手続きをしましょう。
確定申告が必要なケース
確定申告が必要かどうかは、所得金額によって決まります。収入が業務委託の仕事のみの場合には、『年間所得が38万円』を超えると、確定申告が必要です。
所得税の基礎控除額が38万円のため、その範囲内の所得には所得税がかからず、38万円を超えた部分から所得税が課税されます。
令和2年度分より基礎控除額は48万円に引き上げられます。
副業として業務委託を行っている場合には『年間所得20万円』を超えたら、確定申告が必要です。
どちらも確定申告するかしないかを決定するのは、所得金額です。所得は収入から必要経費を差し引いて求めます。
そのため、収入が100万円あったとしても、経費が90万円かかった場合には所得10万円になり、本業でも副業でも確定申告は不要です。
確定申告の流れ
確定申告をするときには、まず必要な書類をそろえます。源泉徴収票や医療費の領収書・社会保険料控除証明書・寄附金の受領証など、収入が分かるものや控除に必要なものです。
全ての書類がそろったら、確定申告書の準備をします。事業所得として業務委託の所得を申告する場合には『申告書B』です。
そろえた書類をもとに、申告書のそれぞれの欄に必要事項を記入します。計算が必要な欄は計算方法が記載されていますので、順に書き込んでいきましょう。付表や計算書なども準備します。
青色申告は申告書と青色申告決算を、白色申告は申告書と収支内訳書をそろえます。あとは控除に必要な書類を添付し、2~3月の提出期間内に税務署へ提出すれば完了です。
榎本希
会社員が副業として業務委託で所得を得ている場合にはその副業所得が20万円以上であれば確定申告が必要です。
また、20万円を超えて以内場合でも医療費控除などの控除を受ける場合には確定申告が必要となります。
業務委託のみで働いている場合には令和2年度分より基礎控除額が48万円の引き上げられるため、所得が48万円以上の場合には確定申告が必要となります。
ここでいう所得とは売上から経費を差し引いた金額を指すことに注意が必要です。
なお、確定申告の用紙はAとBがありますが、業務委託で働く場合には確定申告書Bを使用します。
その他、青色申告特別控除を受ける場合には確定申告書の他に損益計算書などの帳簿書類の提出が必要となります。
源泉徴収について知ろう
源泉徴収は会社員の給与で実施されることがよく知られています。業務委託の場合にはどのような扱いなのでしょうか?
あらかじめ報酬から所得税が引かれる
業務委託の報酬でも『源泉徴収』されることがあります。源泉徴収とは報酬からあらかじめ所得税が引かれることです。一定の税率で先に徴収することで、確実に所得税を徴収できるようにします。
報酬を支払う前に企業が天引きし、国に納付するのです。そのため、源泉徴収の義務は、報酬を受け取る側ではなく、支払う企業側にあります。
源泉徴収の対象となる支払い
源泉徴収は全ての業務委託に適用されるわけではありません。対象となるものは法律で下記のように定められています。
- 原稿料や講演料
- 弁護士や税理士への報酬
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- プロスポーツ選手やモデルなどへの報酬
- 芸能人や芸能プロダクションへの報酬
- 役務の提供を約束することにより支払う金銭
- 広告宣伝のための賞金
- ホステスへの報酬
業務委託として、これらの仕事に携わっている場合には、報酬から源泉徴収された金額を受け取ることになるのです。
出典:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
源泉徴収の計算方法
源泉徴収は一定の税率で計算されます。そのため、実際に支払われる報酬金額を知りたい場合には、まず計算式に当てはめて源泉徴収額を求めましょう。
報酬が100万円以下なら、『源泉徴収税額=支払い金額×10.21%』で求めます。100万円を超えるときの計算式は、『源泉徴収税額=(支払い金額-100万円)×20.42%+10万2100円』です。
報酬金額から源泉徴収税額を差し引くと、支払われる報酬金額が求められます。
榎本希
会社員として働いていると給与明細の中に源泉徴収という項目があり、給与額に応じて一定の金額が引かれていることに気がつかれる方も多いでしょう。
フリーランスの場合、給与ではなく報酬ではありますが、報酬によっては源泉徴収が必要なものがあります。
例えばライターの原稿料やデザイナーのデザイン料などがこれにあたります。
副業の所得が20万円以下の場合には確定申告は不要ですが、これらの項目の報酬を得ている場合には源泉徴収がされているため、確定申告を行う事で払いすぎた税金が還付される事もあります。
所得税の計算方法
源泉徴収される金額と実際に支払う所得税の金額は違います。所得税の計算方法を知ることで、実際に納入する金額を計算可能です。
課税所得の計算
所得税を計算するには、まず課税所得を求めなければいけません。課税所得とは、税率をかける所得金額のことです。
そのためには、まず所得金額を計算します。所得には給与所得や事業所得といった種類があるので、種類ごとに1年間の所得を計算して合計するのです。
こうして計算した年間所得から、所得控除や前年の赤字の繰越額を差し引きます。すると、所得税の税率をかける課税所得が求められます。
所得税の税率について
所得税の税率は『累進課税』といって、課税所得金額が高ければ高いほどあがる仕組みになっています。具体的な税率は、下記の表の通りです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 9万7500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 42万7500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 63万6000円 |
900万円超1800万円以下 | 33% | 153万6000円 |
1800万円超4000万円以下 | 40% | 279万6000円 |
4000万円超 | 45% | 479万6000円 |
求めた課税所得に合致した税率をかければ、所得税額が計算できます。
榎本希
所得税の計算を行うためにはまず、課税対象となる所得の計算を行う必要があります。
フリーランスの場合、所得は売上から経費を差し引いた金額から、更に青色申告事業者であるならば青色申告特別控除、その他、基礎控除、生命保険料控除、社会保険料控除などの各種控除を差し引いた金額が課税対象となる所得になります。
この課税対象となる所得に応じた税率をかけ、所得税控除額を引いた金額が所得税となります。
所得税は累進課税となっているため、所得が多ければ多いほど税率も高くなります。
まとめ
業務委託の所得税は、確定申告をして納税します。確定申告の必要性は年間所得の金額によって変わります。そのため、収入から必要経費を差し引いた所得金額によって判断しましょう。
仕事の種類によっては、業務委託でも源泉徴収されることがあります。所得税が報酬から天引きされるのです。源泉徴収される仕事は法律で定められているので、自分の仕事が当てはまるか確認しましょう。