会社員の健康保険とは
会社員の場合とフリーランスの場合、加入する公的医療保険が異なります。まずは、会社員の健康保険について知っておきましょう。
社会保険の健康保険
社会保険とは、厚生年金や介護保険、雇用保険や労災保険など、さまざまな保険の総称です。会社員の健康保険は、この社会保険の中の一つを指します。
日本の国民は、いずれかの公的医療保険に入ることが法律で義務づけられています。会社員の場合、会社側が社員を社会保険に加入させる義務を負っていますので、必ず社会保険に加入することになるのです。
会社員を辞めたら健康保険はどうなる?
会社員であれば社会保険に入るのが一般的ですが、退職した場合は、健康保険はどうなるのでしょうか?
国民健康保険に加入
前述したとおり、日本では何かしらの公的医療保険に入ることが義務づけられています。しかし、会社を退職した場合は社会保険の加入資格を失います。
日本では『国民皆保険』(こくみんかいほけん)という制度が定められているので、会社の保険を抜けた場合にそのまま何の保険にも入らないということは認められていません。
退職後は、『国民健康保険』に加入する手続きを行うか、健康保険の『任意継続』を行う必要があります。
国民健康保険に加入する場合は、会社に健康保険証を返却して『健康保険資格喪失証明書』を受け取り、自分が住んでいる自治体で保険の切り替え申請をしましょう。
手続きは市区町村でおこなう
再就職するかどうかの意思にかかわらず、国民健康保険への加入は退職後14日以内に行う必要があるとされています。自分が住んでいる自治体の役所に健康保険資格喪失証明書を提出して、手続きを行いましょう。
市区町村によっては郵送や代理人申請による手続きも行えるので、自治体ごとのルールを確認してください。
健康保険と国民健康保険の違いは?
社会保険の健康保険と、国民健康保険にはいくつかの違いがあります。
社会保険は、加入義務が発生する事業所に雇用されている場合などに加入します。例えば法人企業の場合、勤務する会社員は社会保険に入ることが義務付けられています。5名以上を雇っている個人事業所(一部の事業を除く)の従業員、勤務時間によってはパートやアルバイトも社会保険に加入しなければなりません。
一方で、国民健康保険の場合は『健康保険・船員保険・共済組合などの保険に加入していない一般住民』が加入対象となります。
また、社会保険の健康保険は協会けんぽや、健康保険組合があるような大企業ならその保険組合に加入することになりますが、国民健康保険の場合、運営しているのは自分が住んでいる自治体です。
退職した会社の健康保険を任意継続
退職した会社の健康保険は、最大2年間にわたって任意継続することが可能です。在籍中の給与が30万円以上の場合は保険料が安くなるなどの継続するメリットがあります。
ただし、任意継続するためには会社の保険に2カ月以上入っていることや、退職日の翌日から20日以内に手続きを済ませることなど、いくつかの条件がありますので注意しましょう。
任意継続の条件は健康保険組合によって異なる場合があるので、事前に確認しておくようにしてください。
親や配偶者の扶養に入ることは可能?
退職してフリーランスになった場合に、国民健康保険に加入するのではなく、親や配偶者の扶養に入るという方法は可能なのでしょうか?条件や待遇について見ていきましょう。
配偶者の健康保険組合ごとに異なる
親や配偶者が加入している健康保険組合によって、扱いが異なります。退職してフリーランスとなった場合、年収や所得が130万円以下なら加入できるという場合もあれば、個人事業主が扶養に入ることをNGとしている健康保険組合もあるようです。
ちなみに、年収が130万円を超えた場合は、社会保険の扶養から外れなければなりません。一般的には『130万円の壁』などと言われています。
他にも細かな条件がつくケースもあるので、親や配偶者に頼んで、それぞれの健康保険組合に確認してもらいましょう。
国民健康保険には扶養という概念はない
国民健康保険には扶養の概念自体がないため、親や配偶者が国民健康保険の加入者である場合は、その扶養に入ることはできません。
配偶者が元々フリーランスであるなら、自身が退職してフリーランスになったとしても配偶者の扶養に入ることは不可能ということです。年金についても同様で、国民年金の保険料を自分で納めていく必要があります。
子供についても同様です。親が両方とも国民健康保険の場合は子供も国民健康保険に加入しなければならず、家族分の保険料が発生します。
出産手当金と、育児休業給付金はない
国民健康保険と健康保険の違いとして、国民健康保険には出産手当がないことが挙げられます。
出産手当金とは、産休中の女性の生活を支えるために支給されるもので、出産一時金とは異なり、支給金額は給与額を元に算出されます。受給期間は原則98日です。
健康保険ではありませんが、会社員が加入する社会保険のひとつ、雇用保険からは育児休業給付金があります。育児休業給付金は、子供が1歳、または期間が延長される理由があれば2歳まで支給されます。育児休暇中の出勤日数や休暇前の実働時間などいくつか条件はありますが、育児休暇に入る前の賃金のおよそ7割の金額を、1カ月ごとに受け取ることが可能です。
また、産休中と育休中は社会保険料(健康保険と厚生年金)が免除されます。
フリーランスにとって、この二つの手当金と給付金の支給がないことは、明確なデメリットだと言えるでしょう。
健康保険料の経費処理
フリーランスとして活動する場合、仕事に使ったお金を経費として処理することで、節税につなげることが可能です。それでは、国民健康保険料や、会社の健康保険の任意継続をした場合に支払った保険料は、経費として処理できるのでしょうか?
経費にはならない
結論として、公的医療保険は経費にすることはできません。
経費として申請するためには、『事業に関わる出費であったか』が重要になります。例えば、記事を書くための資料として購入した書籍や、プログラマーが使うPCやソフトは経費として計上できますが、公的医療保険については事業との関連性がありません。
個人的な出費である公的医療保険は、経費として認められることはないのです。
確定申告で所得控除の対象になる
健康保険料は、経費にはなりませんが、確定申告において所得控除の対象にできます。経費ではなく『控除』という形で、節税効果を得られるのです。
この場合は、個人事業主が事業に関係のない時に使う勘定科目である『事業主貸』として経費処理をします。その後は、社会保険料控除に含めて申請することで控除対象になります。
まとめ
会社を辞めてフリーランスとなった場合は、今まで入っていた健康保険の資格を失い、任意継続するか国民健康保険に加入しなければなりません。任意継続も期間は2年と定められているので、長期にわたってフリーランスとして活動する場合、必ず国民健康保険に加入することになります。
国民健康保険は、家族を扶養に入れることができない、出産手当金と育児休業給付金がもらえないというデメリットがあります。フリーランスになることを検討している場合、このような公的医療保険の違いについても把握しておきましょう。