個人事業主のスーツは経費にできる?現状では判断が分かれる

個人事業主は、経費になるかどうかを自分で判断する必要があります。経費精算に慣れていないと経費にできるものとできないものが曖昧に感じるものがあります。今回はその中から、スーツは経費として計上できるかどうかについて考えていきましょう。

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経費になるかどうかの判断ポイント

まず最初に、個人事業主が何かを購入したとき、それが経費として計上できるかどうか判断するポイントについて見ていきましょう。

事業を行う上で必要か

事業を行って収入を得るには、仕入れや事務用品などの費用がかかります。これらは経営上必要な費用とみなされ、それを総じて「経費」と呼びます。

この原則は、個人事業主であっても変わりません。購入したものを経費として計上するには、『それが事業を行うにあたって必要不可欠なものか』を見極めねばなりません。

準備費用も経費にすることが可能

個人事業主として開業する場合、事前に準備するものが多くなります。その準備にかかった費用も、個人事業費として営業が開始されてから、経費として計上することが可能です。

  • 事務所や店舗などの家賃
  • 水道光熱費
  • 電話代・インターネットなどの通信費
  • 事務用消耗品費

上記のようなものも、後々経費計上できる項目です。損がないよう、領収書などは都度取っておくようにしましょう。

スーツ着用必須の場合、経費にできる?

個人事業主であっても、企業先常駐のエンジニアや営業マンであれば、仕事に当然スーツを着ていきます。中には、値が張るようなスーツを着用する場面があるでしょう。

では、その『スーツ代』は経費として計上できるのでしょうか。

専門家でも見解は分かれる

実はこの案件については、専門家の間でも見解が分かれています。その大きな理由は、『スーツが洋服である』という点にあります。

洋服に分類されると、経理的観点で何が困るのでしょうか。

経費にできないという判断が主流

見解が分かれている中でも、大勢を占めているのは残念ながら『スーツは費にできない』という判断です。

その根拠は、昭和49年に京都地裁で行われた『個人事業における被服費について』の裁判にあります。この裁判では、以下の理由から判断されています。

  1. 個人事業主でなくても、誰もが洋服は必要である
  2. 個人の趣味趣向が影響されやすい
  3. 耐用年数にかなりの個人差がある

上記の事柄から、衣服費は個人的な支出であり、事業に必要な支出ではないとみなされるのです。ですから、現在の経理上スーツを経費にすることは困難である、と言わざるを得ません。

サラリーマンは経費にできる矛盾がある

ただし、この定例は近年改正された『特定支出控除』というサラリーマンのための経費の内訳項目によって、矛盾も生じています。特例支出控除とは、『制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)』が控除の対象となる、というものです。

サラリーマンが控除対象ならば、同じように働いている個人事業主はどうして経費計上できないのか、と言った矛盾が浮かび上がっているのです。

経費に計上する方法

それでは、スーツを経費として計上するためにはどうしたらいいのかを解説していきます。どうしても経費として計上したい場合のポイントです。

事業に使用する割合で按分する

被服が経費として認められないのは、仕事で使用しているのかプライベートで使用しているのか分からないという点にあります。逆に言えば、仕事で使っていることが証明できれば、全額は難しいけれども幾らかは計上ができるということです。

申告の際には購入したスーツを事業割合で按分し、その仕事をする上でのスーツの重要性を主張してください。

たとえば、週休2日制の仕事で働く個人事業主の場合、一週間(7日)のうち5日は仕事でスーツを着用し、2日はプライベートでスーツを着用していないことになります。仮に21万円のスーツを買った場合、7分の5の15万円は経費として按分できる可能性があると言えるでしょう。

税務調査で指摘されるリスクがある

上記でも記載しましたが、基本的に個人事業主のスーツの経費計上が税務調査で認可されることはまだ稀です。申請期間ギリギリに申告に行ってしまうと、スーツ代は認められないと指摘され、申告が間に合わないというリスクがありますから、注意が必要です。

税務署に相談がオススメ

個人事業主とはいえ、その業種によって経費にしたいものは異なります。

何が経費として認められるかは税務署の判断次第であるため、迷ったら近くの税務署に相談してみることをおすすめします。

取引先から「スーツの色や形状が指定され、新規の購入が必要になった」など、根拠が説明できれば、経費として認められる可能性も高まります。

まとめ

経費になるものを把握しておくことは、節税につながります。まだ個人事業主がスーツを経費にするのは難しいですが、特定支出控除などで追い風になっているのも事実です。

スーツ代を経費に計上できるか迷ったら、この記事を参考にしながら、スーツを仕事以外では使っていないと示すことに加えて、必ず按分計算をしてください。しっかり根拠を示せれば、スーツ代を経費にできる可能性はあります。

小西 薫 [監修]

株式会社ニコプロダクション代表取締役。IT・経営コンサルタントとして、コンサルティング事業、WEBマー ケティング事業などを行う傍ら、起業家の支援をライフワークと しており、経済産業省の後援を受けて発足した起業家支援サイト 「ドリームゲート」のアドバイザーとして法人の立ち上げやアイデアブラッシュアップ、出版のサポートなども行っている。

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