フリーランスの税金の計算方法。申告方法による違いや経費について説明

フリーランスで生計を立てていく場合、会社員のように給与から税金が天引きされることはありません。税金もすべて自分で処理しなくてはならないのです。面倒な経理処理を後回しにしてしまうと、確定申告のときに本当に困ってしまいます。ここでは、フリーランスが知っておくべき税金の計算方法や申告方法を説明します。

フリーランスでかかる税金の計算方法

フリーランスの収入は、税務上は事業所得となり所得税や住民税の対象となります。また、一定以上の売上に達すると、消費税も発生します。フリーランスが支払うべき税金とその計算方法を、1つずつ見ていきましょう。

所得税の計算方法

所得税とは、1年間で稼いだ金額に対してかかる税金のことです。1年間の合計所得が38万円を超えると、納税の義務が生じ、所得に応じて税率が変わります。所得税の計算方法は、以下の通りです。

1年の総収入金額 – (必要経費+所得控除金額+青色申告特別控除) = 課税所得金額

このように、必要経費や所得控除金額などを差し引いた課税所得金額に対して税金が課せられます。課税所得金額が多いほど、税率は高くなります。

たとえば、課税所得金額が1,000円〜1,949,000円までの場合、税率は5%(控除額0円)。課税所得金額が1,950,000円〜3,299,000円までなら、税率は10%(控除額97,500円)。課税所得金額が3,300,000円〜6,949,000円までなら、税率は20%(控除額427,500円)となります。

課税所得金額が多くなるほど税率も上がりますが、同時に控除額も高くなっていきます。

住民税の計算方法

住民税は、所得税の確定申告書を基に計算されます。計算方法は以下の通りです。

所得割(一律10%) + 均等割(世帯割) = 住民税

前年の課税所得金額10%を課税する「所得割」と、課税所得金額に関係なく定額を課税する「均等割」、この2種類の税金の合計金額です。所得が一定金額を下回るときは、減額されたり全額免除になる場合もあるでしょう。

個人事業主税の計算方法

フリーランスが、都道府県に対して支払う税金です。年間の合計所得金額が290万円を超えると、3~5%の税率で課税されます。税率は業種によって異なるので、事前に確認しておきましょう。計算方法は、以下の通りです。

(収入 − 必要経費 − 専従者給与等 − 各種控除)× 税率 = 個人事業税

住民税と同じく、確定申告をすると納付書が自動的に対象者に送られてきます。特定の企業に常駐して案件をこなしている場合、雇用されている状態とほとんど変わらないので非課税となることもあるでしょう。

消費税の計算方法

消費税は、フリーランスとして前々年(2年前)の課税売上高が1,000万円を超えた場合に支払う税金です。売上高が1,000万円以下の場合、納税の必要はありませんので、確定申告について考える必要はありません。

税金の計算例

具体例を考えてみましょう。たとえば、「所得500万円、社会保険料60万円、生命保険料12万円、配偶者なし」、この人が青色申告をする場合、以下のように計算します。

課税所得の計算

所得500万円 - 青色申告特別控除65万円 - (基礎控除38万円 + 社会保険料控除60万円 + 生命保険料控除5万円) = 332万円

所得税の計算

332万円(課税所得)× 20%(税率)– 427,500(控除額)= 23万6,500円(納税額)

結果、 所得税として23万6,500円を納税することになります。

榎本希

令和2年度分より基礎控除額が48万円に引き上げられます。

フリーランスの所得は「売上-経費」で計算され、そこから青色申告であれば条件を満たした場合には最大65万円(原則は55万円)の青色申告特別控除が引かれます。

その他、国民年金や国民健康保険料などの社会保険料控除、生命保険等に加入している場合には生命保険料控除などの各種控除があります。

年間売上が500万円、経費が100万円、社会保険料が40万円、生命保険料控除が2万円、e-Taxを利用しての青色申告である場合には

「500万円-100万円-65万円=335万円」が事業所得となります。

「335万円-40万円-2万円-48万円=245万円」が課税所得金額となります。

経費はどう計算する?

経費で落とせるのは、当然ながら事業にかかわる費用のみです。しかし、フリーランスの場合は家で仕事をすることも多いので、家賃や光熱費など生活に関係する費用をどこまで経費にするのか、ということが問題になりますね。

経費に入る項目

まず、家賃や住宅ローンは、自宅が事務所であれば経費になります。家賃の経費に関する割合は、仕事でどの程度のスペースを使用しているのか、占有率で決まります。加えて、住宅ローンも金利分は経費にできます。勘定科目は「地代家賃」です。

電気・ガス・水道などの光熱費も、自宅が事務所の場合は経費として計上できます。光熱費などの割合も、やはりどれくらい事業で使用したかで決めます。勘定科目は「水道光熱費」です。携帯電話やインターネットの通信費も、経費になります。こちらも、使用割合を決めておきましょう。勘定科目は、「通信費」です。

パソコンも経費になります。勘定科目は10万円未満なら「消耗品費」、10万円以上なら「減価償却費」として計上します。その他、外食代、旅行代、洋服代なども含め、事業にかかわる費用であるなら計上できるので、事前に十分調べておきましょう。

経費に入らない項目

プライベートで使用したものは、経費にできません。健康診断やスポーツジム、プライベートの旅行、こうしたものはNGです。敷金も戻ってくるので資産扱いとなり、経費にはできません。また、国民年金や国民健康保険は確定申告の所得控除で全額控除されるため、経費として計上できないでしょう。

榎本希

経費になるものの範囲は事業を行うために支払ったものとなります。

交通費や書籍代や文房具、会計ソフトなどを利用している場合にはその利用料、税理士等に相談した場合にはその報酬、セミナー等に参加した場合には参加費、その他事業のための会議等の際に使用した接待費や交際費についても経費になります。

10万円以上の物については減価償却資産となりますが、10万円未満のPCやプリンターなどは経費となります。

その他、自宅兼事務所のような場合には家賃や光熱費なども事業に使用した範囲内で経費とすることができます。

家事按分などどこまでが経費となるか分からない場合には税理士等の専門家に相談してみるとよいでしょう。

申告方法による違い

確定申告をする時に覚えておかなければいけないのが、確定申告書Bには青色申告と白色申告の2種類があるということです。フリーランスの場合、どちらかを選択できます。それぞれ、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

青色申告とは

青色申告とは、計算や記帳の手間をかける分だけ、税金優遇などの特典を受けられる所得税の確定申告制度です。

メリットは、色申告特別控除として、最高65万円を差し引くことができる点でしょう。家族への給与が経費に含められるのも利点といえます。デメリットは、面倒な帳簿づけが必要な点でしょう。確定申告の提出書類も少し多くなります。

白色申告とは

白色申告とは、青色でない通常の申告書を用いて行う申告のことです。メリットは、面倒な帳簿作成の必要がないことでしょう。確定申告の提出書類が比較的少なめなのも魅力です。デメリットは、青色申告のような特別控除の特典がないことです。

青色が向いている人・白色が向いている人

青色申告が向いているのは、収入が多くある人、また煩雑な帳簿作成をきちんとこなせる人です。収入が多ければ、控除額や経費として計上できる金額も多いので、やはり青色申告にメリットがあるでしょう。反対に、白色申告が向いているのは、節税メリットを期待するほど収入が多くない人、また複雑な帳簿をつけたくない人です。

年度によって収入に大きな変動がある人も、白色申告が向いているでしょう。しかし、特別控除の特典があることを考えると、やはり可能であれば、青色で申告するに越したことはありません。青色申告の場合、複式簿記による記帳をすれば、特別控除として65万円節税できます。しかし、白色申告では0円です。

簡単に申告書を作るならクラウド会計ソフトが便利

最近では、青色申告のためのソフトがたくさん出ているので、活用すれば帳簿作成が楽になるでしょう。クラウド型の会計ソフトを使えば、パソコンにソフトをインストールする必要もありません。ネット接続し、ログインすれば、すぐ使えるのです。

初心者にも使いやすく作られた、評判のいいソフトが数多くあります。分からないところは、電話やメールで質問できるサービスなども付いています。全自動のクラウド会計ソフトを使うと、カード取引や預金取引を自動取得でき、帳簿作成も自動で行われます。銀行の通帳を見ながら、取引内容をソフトに入力していく必要がないのです。

こうしたクラウド型の会計ソフトは、インストール型の欠点をかなりの程度カバーしている良質なものです。これから青色申告にチャレンジという方は、ぜひクラウド会計ソフトをためしてみましょう。

榎本希

確定申告には白色申告と青色申告がありますが、節税面では青色申告が断然オススメです。

令和2年度分より基礎控除が48万円に引き上げられ、青色申告特別控除は55万円に引き下げられましたが、e-Tax利用などの要件を満たした場合には65万円の控除が受けられます。

また、給与所得控除も55万円に引き下げられたため、青色申告で要件を満たした場合には通常よりも10万円分の差が出ます。

青色申告に帳簿作成は手間がかかると思われがちですが、最近ではクラウド会計ソフトなど簿記の知識がなくても簡単に帳簿付けができるものがあります。会計ソフトを利用することで日々の帳簿付けから確定申告書類の作成まで行う事もできます。

会計ソフトの利用料も経費として計上できるため、節税の恩恵は大きいといえます。

榎本希 [監修]

医療機関・医大の研究室にて長年勤務をした後、行政書士試験を受験。医療系許認可をメインに扱う行政書士として、行政書士のぞみ事務所を開業。再生医療関係の許認可・診療所開設・医療広告ガイドラインに基づく医療広告のチェック等の他、任意後見・契約書作成・起業支援を扱う。

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