業務委託における請求書の必要性
請求書は委託された業務が完了した際に、取引先に対して発行する重要な書類です。まず、何のために発行するのか、発行したことでどんなメリットがあるのか確認しましょう。
請求書の目的
個人事業主であるなしにかかわらず、ビジネスにおいてお金のやりとりが発生する場合、請求書を発行する必要があります。手付金や中間金などを請求することもありますが、納品と同時に発行する場合が最も多いでしょう。
請求書の主な目的は『請求の事実を書面で残す』こと、そして『取引先と請求内容を共有する』ことの2点にあります。このためには、必要な情報が記載された請求書を適切な方法で送付することが重要です。
また、商法により、請求書は5年間保存しなければいけません。発行しなくても特に法律で罰則が定められているわけではありませんが、取引先との無用なトラブルを避けるためにも、必ず請求書は発行しておきましょう。
作成のメリット
主に次の三つのケースで請求書が役立ちます。
- 入金処理をスムーズに行ってもらう
- トラブル時の証明になる
- 入金管理がしやすくなる
請求される側の企業では、社内での支払い手続きに請求書が必要な場合があります。営業担当者が忘れている場合もあるので、請求書の発行依頼がなくてもこちらから送付しておきましょう。
相手が支払いや取引内容を忘れていることも、絶対ないとは言い切れません。万が一、入金がなかった場合にも、請求内容が書面で証明できれば相手方と穏やかにやり取りしやすいでしょう。
また、自分自身の入金管理にも使えます。請求が増えるに従って入金管理は複雑になっていきます。請求書の控えを保管しておけば、容易に請求漏れや入金漏れを確認できます。
請求書のテンプレート項目
請求書には、どの取引についていくらの支払いが必要であるか、漏れなく記載しておきましょう。基本情報や金額、期限など、一般的な請求書に書かれている項目について説明します。宛先や請求者などの基本情報
請求の宛先となる相手方の事業者名を明記しましょう。『会社名』『担当部署』を記載し、『担当者』を請求書の左上に記載するのが一般的です。
右上には請求者、つまり自分の『会社名』『氏名』『住所』『電話番号』などを記載しておきます。通常、企業名の横には角印が押印してありますが、特に法律で定められているわけではありません。個人事業主であれば認め印でも問題ないでしょう。
ただし、角印が押してあるのが常識と捉える企業も少なくありません。個人事業主も屋号で角印を作っている人もいるため、もし気になるのであれば用意しておくとよいでしょう。
業務委託費や交通費などの品目と金額
請求書の本文に当たる部分には、『請求金額』をわかりやすく書いておきましょう。その下には請求金額に含まれる内容を細かく記載します。
明細部分には、『品目』『数量』『単価』『価格』を明記します。契約した業務委託費のほか、交通費など請求する必要のある項目を並べておきましょう。
価格欄の下には、『小計』『消費税』『合計』が必要です。請求金額に何が含まれ、そのうち消費税がいくらなのかはっきりさせておくと、相手方の経理手続きがスムーズに進みます。
振込先や期限
最後に、支払いをしてもらいたい『口座』について、下記の4点が明記されているか確認しましょう。できれば銀行コードや支店コードも入れておくとベターです。取引先の銀行口座と振込先の銀行口座が同じ場合には、入金手数料が安くなる場合がほとんどなので、入金用口座を複数持っている場合は、すべて記載しておくと親切かもしれません。
- 銀行名(銀行コード)
- 支店名(支店コード)
- 口座番号
- 口座名義
合わせて、『請求日』と『支払い期限』も記載しておきます。また、振込手数料の支払いについても備考欄に書いておくとよいでしょう。
請求書作成のポイント
いざ請求書を作成しようという段階になると、「ここはどうしたら?」と思うポイントがいくつか出てくるかもしれません。多くの人が疑問に感じる『手数料』『源泉徴収』『消費税』について解説します。
手数料について
請求金額を振り込んでもらうとき、『振込手数料』が発生します。これはどちらが支払うものと決まっているわけではないので、あらかじめ契約時に取り決めをしておくことが肝心です。
請求の段になって手数料の話を出すのも気まずいでしょうし、もし何も決めないまま進めてしまうと、振込手数料を差し引かれた金額が入金されることも少なくありません。
相手方から話が出てこなければ、こちらからきちんと確認しておくべきです。先ほども述べましたが、備考欄などに「お振込手数料はお客様にてご負担をお願いたします。」とひと言添えておきましょう。
源泉徴収について
源泉徴収とは、事業主が雇用者へ支払う報酬から、所得税を前もって差し引く方法のことです。個人事業主の方では何の手続きも必要ありませんが、正しい知識を持っておくことが必要です。
また、源泉徴収額の計算方法は支払い金額により異なります。個人事業主の場合、自分の仕事内容が源泉徴収の対象となるのかどうか、自分で確認しておきましょう。
- 100万円以下:支払い金額×10.21%
- 100万円超:(支払い金額-100万円)×20.42%+10万2100円』
ちなみに、年をまたいで源泉徴収漏れがあった場合、わかった時点で源泉徴収額を相手方に支払い、所得税の更正を税務署に請求しなければいけません。面倒な手続きを避けるためにも、源泉徴収がされているか確認しておきましょう。
消費税について
『消費税』を請求するかどうかは、個人事業主それぞれの判断によります。外税として請求するのであれば、請求書にも消費税の項目を載せておきましょう。
年収が1000万未満の場合、免税事業者となるため内税で構わないと考えているのならば、請求書に消費税額を載せる必要はありません。
ただ、業務のために必要な物品などを購入する際には、消費税を支払います。これは本来、相手方が支払うべき金額です。2019年10月から、日本でも消費税が10%の大台に乗りました。消費税の納付が負担になる消費税は請求した方がよいでしょう。
作成や発行後のチェックポイント
作成が終わったら、発行する前に上から下まで入念なチェックを行いましょう。また、発行後に未入金トラブルがあった場合の対応についても紹介します。
記載内容や金額の確認
請求書の作成が終わったら、もう1度、内容を確認していきましょう。請求金額、支払い期限、振込先などの基本情報はもとより、相手先の名前に御中や様といった『敬称』が付いているかどうかなど、細かいチェックが大切です。
また、その取引に対する請求書をすでに送っていないかどうかも、併せて確認しておきます。相手方に不快な思いをさせないためにも、正確な内容の請求書を発行し、スムーズに取引を終えたいものです。
送り先や入金の確認
ときには入金の確認が取れない場合もあるかもしれません。その際には、請求書の控えを確認し、『送付先』や『振込先』の記載に間違いがないか再度確認の上、相手先に連絡するようにしましょう。
民法によると、請求は『請求書を送っただけ』では成立しません。相手が『請求書を受け取った事実』が必要です。それを証明できるように、改めて請求書を送付する場合には、内容証明郵便を利用するとよいでしょう。
まとめ
請求書は、相手方に「請求するのでお支払いお願いします」という意志を伝えるために発行します。請求書を送付することに気兼ねする方もいらっしゃいますが、正当な対価であれば、正々堂々請求し、確実に入金してもらうため、必要な情報は漏れなく記載しておきましょう。
請求書をきちんと作っておくと、その後にトラブルが起きたときには自分を守る手段にもなります。また、入金漏れ防止にも役立つため、基本的な請求書の知識をつけておくことをおすすめします。