副業でアルバイトを始める前に
副業でアルバイトをするときには、まずやるべきことがあります。それは、本業の就業規則を確認することと、副業をよく選ぶことです。
本業の就業規則を確認しよう
副業したいと思ったら、まずは本業の就業規則をチェックします。副業については、会社ごとにルールが違いますので、まずは本業でどのようなルールになっているかを知りましょう。届け出制や禁止になっているのに、秘密で副業をする場合、思わぬリスクを負うことになってしまいます。
副業禁止の会社で働きながら、他でアルバイトをしたとしても、それだけで処分されてしまうというようなことはまずありません。副業は法的に禁止されているわけではありませんし、勤務時間外に何をやるかは自由だからです。
ただし、本業の会社に大きなダメージを与える下記のようなケースでは、懲戒処分を受けたり、実際に裁判にまで行われました。
- 本業のライバル企業で副業をして、新商品情報をバラしてしまった
- 風俗店などのアルバイトで、本業の信用をおとしめてしまった
法的に副業は禁止されてないものの、副業が本業に影響するかは要注意でしょう。
こんな副業はしないように気を付けて
副業する場合には、どこでするか、ということがとても大切です。副業先を選ぶポイントは3つあります。
- 体力的に無理がないこと
- 本業の同業他社でないこと
- ねずみ講やマルチ商材に関わるものでないこと
体力的に無理のある副業では続きません。深夜に働いたり、重労働をし過ぎたりすると、本業に支障をきたすことにもつながります。そのため、副業の時間帯・頻度は無理がない範囲かどうか、きちんと考えなければいけません。
同業他社での副業は、本業の会社に損害を与えてしまう可能性があります。また、本業の会社からの信頼を失ってしまうことにもつながることです。最悪の場合、解雇されてしまうということもあるので、避けるべき副業先といえます。
ねずみ講やマルチ商材に関わる副業は、社会的信用に関わります。犯罪に関わってしまうこともありますし、場合によっては解雇につながることも考えられるのです。
副業でアルバイトをすると確定申告は必要?
副業でアルバイトをしたとき、年間20万円以上の所得になると確定申告が必要です。確定申告の重要性と、アルバイト代の確定申告のしかたについて解説します。
副業の年間所得20万円以上で必要に
副業の年間所得が20万円以上になると、確定申告をしなければいけません。必ず確定申告をして正しく税金を払いましょう。
確定申告しないのは犯罪
確定申告をする必要があるのにしていないのは、犯罪です。一定以上の収入を得ているのに納税していないということですので、脱税になってしまいます。追徴課税の支払いが命じられたり、悪質とみなされると罰金が課されたりすることもあるのです。
確定申告をすることで、本業の会社に副業が知られてしまうのではないか、と心配している人もいます。中には、副業を隠しておくなら申告しない方がいいのでは?と考える人もいるのではないでしょうか。しかし、追徴課税や罰金のことを考えると、確定申告しないのはリスクが高くなってしまいます。
また、副業は住民税の金額から本業の会社に知られることがあります。この場合、確定申告をしていないと、会社に脱税していることも知られてしまう可能性があるのです。脱税という犯罪行為が、会社の信用をおとしめるという理由で、最悪の場合には解雇になってしまうことも考えられます。
アルバイト代は給与か報酬か
アルバイト代は、給与所得として確定申告します。確定申告には『白色申告書』を使います。税務署や国税庁のホームページで入手できますので、用意しておきましょう。
その他に必要な書類は下記の通りです。
- 給与所得の源泉徴収票
- 医療費の領収書・社会保険料控除証明書・生命保険料控除証明書・地震保険の控除証明書・寄付金の受領書などの控除に必要な書類
確定申告は2月16日~3月15日の期間限定です。必ず期間内に行いましょう。
副業アルバイトで社会保険はどうなる?
副業アルバイトをすると、社会保険はどうなるのでしょうか。副業の社会保険について解説します。
社会保険は要件を満たすと両社で加入が必要
社会保険は要件を満たすと、本業・副業の両方で加入しなければいけません。副業のアルバイト先が社会保険に加入していて、かつ、社会保険の加入要件を満たす働き方をしている場合、二重に加入するという状態もあり得るのです。
社会保険への加入が義務付けられている『強制適用事業所』は2種類あります。
- 株式会社など法人の事業所
- 常時5人以上の従業員が働いている個人の事業所(農林漁業、サービス業などの場合を除く)
アルバイト先が上記にあてはまるときには、働き方によって社会保険に加入しなければいけなくなります。
雇用保険は本業のみで加入
雇用保険は本業の企業でのみ加入しますので、二重加入になることはありません。副業をしていたとしても、保険料の算出は本業の賃金のみで計算されます。雇用保険の保険料は、副業で収入が増えても変わることはないのです。
副業のアルバイト先が雇用保険に加入している事業者で、労働条件が加入要件を満たしていたとしても、やはり雇用保険は本業のみで加入します。
労災保険は両方の会社で加入
労災保険は本業でも副業でもどちらの会社でも加入します。仕事の最中のケガは正社員だけでなく、パートやアルバイトにも起こり得ることです。雇用形態に関わらず、すべての労働者が労災保険に加入します。
本業・副業それぞれの会社で加入するので、副業のアルバイト先で仕事中にケガをした場合には、副業の事業所で加入した労災保険を利用します。
副業は中小企業でする方が保険料は抑えめに
社会保険は収入に応じて保険料を支払います。そのため、副業をすると保険料があがってしまうのです。副業で社会保険料があがるのを抑えたい場合には、中小企業などでアルバイトするのがいいでしょう。
規模の小さな事業所は、社会保険に加入しなくてもいいからです。社会保険に加入している事業所でアルバイトをする場合には、『1週間に20時間以上の所定労働時間であること』『1ヵ月あたり8万8000円以上の賃金であること』という条件を満たすことで、社会保険に加入することになります。
従業員500人以下の事業所は、原則として社会保険に加入しなくていいとされています。そのため、従業員500人以下の小さな事業所であれば、どれだけ働いても社会保険に加入することはなく、本業の会社で支払う社会保険料のみでいいのです。
副業アルバイトをすると税金はどうなる?
副業でアルバイトをすると、税金はどのように計算するのでしょうか。副業アルバイトと税金について解説します。
所得税は総所得額に対してかかる
副業でアルバイトをすると所得が増えます。所得税は本業の所得ではなく、すべての所得の合計に対してかかりますので、副業で所得が増えると、その分所得税も増えるのです。
所得税の計算方法
所得税は『所得税額=所得金額×所得税の税率』で求められます。そのため、所得税を計算するときには、まずは課税される所得を計算するのです。本業と副業のアルバイトをしている場合には、どちらも給与所得ですので、源泉徴収票や給与明細を確認して給与所得額を合計しましょう。
そうして求められた合計の給与所得額から、基礎控除や医療費控除などさまざまな控除額を引いていきます。ここで求められたのが、課税される所得金額です。この課税される所得金額に、所得に応じた所得税率をかけ、最後に控除額を引くことで、所得税の計算ができます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
住民税は副業所得に関わらず申告が必要
住民税は副業所得がいくらでも、必ず申告しなければいけません。所得税の場合には、所得20万円に満たなければ確定申告はしなくても構いません。しかし、その場合でも、住民税の申告はしなければいけないのです。
住民税の計算方法
住民税は『所得割』と『均等割』という2つからなります。
- 所得割:課税所得に対して一律10%課される
- 均等割:一定以上の所得があると均等に課される、自治体ごとに違うが5000円ほど
『所得割=課税所得×10%』で求められますので、この金額に自治体ごとの均等割の金額をたすことで住民税額を計算できます。
納付方法
サラリーマンの税金は、会社で給料から天引きされて支払われることがほとんどです。副業でアルバイトをした場合には、住民税や所得税の納付はどのようにするのでしょうか。
副業の住民税の支払い方法
副業のアルバイトに対する住民税の支払いは、自治体によって対応が違います。申告のときに『自分で納付』を選べば本業の会社への通知がいかない自治体もあれば、『自分で納付』を選んでいても本業の会社へ通知のいく自治体もあるのです。
住民税の納付への対応は自治体によってさまざまですので、事前に確認しておくようにしましょう。
住民税は市区町村に申告、納付が必要
副業で収入があれば、金額に関わらず住民税の申告が必要です。申告するのは市区町村になります。市民税課など、市区町村の担当窓口をおとずれて、『住民税申告書』の提出をしましょう。
市区町村によっては、『住民税申告書』のほかに、『収支内訳書』『帳簿書類』などの添付が必要なケースもあります。自治体の担当に確認すると確実です。
『住民税申告書』は、各市町村のホームページでダウンロードするか、窓口で入手してください。『住民税申告書』の手続きの期間は確定申告と同じく2月16日~3月15日です。
住民税の申告をしないでいると、追徴課税の対象になります。申告漏れが知られてしまったり、申告後に滞納したりしていると、財産の差し押さえに発展するケースもあります。必ず申告し、納付しましょう。
副業バイトの所得税は源泉徴収
副業でアルバイトをすると、所得税は源泉徴収されます。給与所得の場合には、金額に関わらず所得税は源泉徴収で処理されるからです。
そのため、副業での源泉徴収や、所得税額の確認は、給与明細や源泉徴収票で可能です。
本業と副業の源泉徴収額を比較すると、副業の方が割高になっています。これは、本業と副業では所得税額の算出に使う『源泉徴収税額表』の種類が違うからです。
本業は毎月コンスタントに同程度の給与を受け取りますが、副業では給与に差が出ることがあります。それでも源泉徴収額が不足しないよう、多めに天引きされるようになっているのです。
副業アルバイトを会社が確認できるのはなぜ?
副業のアルバイトが会社に知られてしまうには、それなりの理由があります。ここでは、なぜアルバイトがバレてしまうのか・バレないためのポイントは何か、という点を解説します。
住民税決定通知書の額で判明する
副業のアルバイトが会社にバレる原因として、『住民税決定通知書』の金額があります。自治体によっては、住民税の普通徴収を希望している場合でも、自動的に会社に副業分を含めた通知を送ってしまうこともあるのです。
そのため、本業の給与に見合わない住民税額が記載されていると、それをきっかけに副業が会社にバレる、ということが起こります。
要注意、アルバイトは普通徴収ができない
住民税を納める方法には2通りあります。
- 特別徴収:副業分も合わせた『住民税決定通知書』が本業の会社へ送付され、本業の給与から天引きされる
- 普通徴収:納付書を使って自分で納付する
住民税の納付は特別徴収を推進する流れがあります。そのため、アルバイトなど給与所得を得る副業の場合、副業分の住民税を自分で納付できないケースがあるのです。
中には、本業の会社が特別徴収をしている場合には、副業分の住民税も特別徴収しか認めない自治体もあります。また、単に人的ミスによって、普通徴収ではなく特別徴収になっているということもあります。
住民税の納付については、副業を始める前に各自治体へ問い合わせするのがいいでしょう。
給与所得でも普通徴収にする方法は?
給与所得は基本的に特別徴収で住民税の納付が行われます。しかし、特別徴収では本業の会社に副業が知られてしまう可能性が高いです。そこで、給与所得でも普通徴収で住民税を納める方法について2つ紹介します。
1つめは、自治体の窓口で頼む方法です。副業をしていること・本業の会社に副業を知られたくないことを伝え、副業分だけを普通徴収にできないか確認してみましょう。自治体によりますが、本業の給与が特別徴収されている場合には、副業分を普通徴収としてくれるところもあります。
2つめは、副業先の事業所から『普通徴収への切替理由書』を自治体に提出してもらう方法です。本業でサラリーマン・副業でアルバイト、といった具合に、複数の事業所で特別徴収を受けている場合には、普通徴収への切替に対応してもらえます。
こちらの方法ですと、副業先の会社から書類を提出してもらうので、そのお願いをしなければいけません。
これら2つの方法を試してみて、どちらも普通徴収ができないとなると、本業・副業の分と合わせた住民税額で特別徴収ということになります。
副業会社で社会保険加入義務が生じて判明する
副業のアルバイトがバレる理由として、副業の会社で社会保険への加入義務が発生してしまった、ということがあげられます。副業先の事業所で社会保険の加入義務が生じると、事業所は『健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届』を提出します。
すると、本業と副業2つの事業所の収入割合によって保険料が按分されるので、社会保険料が変更になることがあるのです。この変更の通知によって、本業の会社へ副業がバレる可能性があります。
副業アルバイトが会社に認識されないことは可能?
副業でアルバイトをすると、住民税や社会保険の加入で本業に知られてしまう可能性があることが分かりました。そこで、本業の会社に副業が知られないようにする工夫を解説します。
社会保険加入条件を満たさない副業をする
本業の会社に副業アルバイトが知られないようにするためには、小規模な事業所でアルバイトをすることです。従業員数500人以下の小規模な事業所の場合、社会保険に加入しなくてもいいため副業が本業に知られにくいからです。
事業所自体が社会保険の加入義務がないので、副業で社会保険に加入しなければならないくらい働いたとしても、社会保険に加入しなくていいのです。
そのため、社会保険料が変更されることもありませんので、本業の会社へ通知が届き、バレてしまうということが防げます。
判明しにくい副業を選ぶ
本業の会社に副業アルバイトがバレないようにするためには、バレにくい副業を選ぶということも大切です。例えば、接客業など人目につくアルバイトをしていると、本業の会社の人に見られてしまう可能性があります。
そのため、倉庫や工場での仕事など人目につかない職種を選んだり、本業の会社からできるだけ離れた場所にある職場を選ぶ、といった工夫をしましょう。
まとめ
副業アルバイトを始める前には、本業の就業規則を調べたり、無理なくできる副業をさがしたりしましょう。事前に副業やそれを取り巻く税金・社会保険について知り、正しく申告できる知識を身につけておくことも大切です。
これらの知識を事前に知ることで、本業に支障をきたすことなく、副業アルバイトをできるようにしましょう。