副業でアルバイトをする正社員が増加中
副業でアルバイトをする正社員が増えています。給料はなかなかあがらないけれど、増税が進む中、負担はどんどん増しています。そのため、アルバイトで収入を増やす正社員が多くなっているのです。
そうした状況を受け、厚生労働省ではモデル就業規則を副業容認の内容へと変更しました。副業にはどのようなメリットや注意点があるのか、解説します。
副業するメリットはたくさんある
副業にはたくさんのメリットがあります。
- 収入を増やせる
- 本業とは違うキャリアにチャレンジできる
- 新しい人脈作りができる
- これまでとは違った視点でものごとを見られる
- 副業の経験を本業に活かせる
- 本業を辞めても収入を維持できる
- リタイア後も収入を確保したり社会参加したりできる
副業する最も大きなメリットとしては、収入を増やせることです。経済的な余裕ができるので、精神的にも安定します。また、チャレンジする副業によっては、本業をリタイアしたあとの収入源にすることも期待できるのです。
もちろん、メリットは収入だけではありません。副業をすることで得られる新しい経験・知識・人脈などメリットであると言えるでしょう。これらを活かして本業やプライベートを充実させることができます。
副業を始める前にここに注意
副業にはメリットがたくさんありますが、思いつくままに始めるのはやめましょう。まずは本業の会社の就業規則をチェックします。就業規則には、副業に関する決まりが書いてあるので、まずはそのルールに沿って申請や報告をしましょう。
実際に副業を始めてからは、本業の会社に損害を与えないことにも注意しなければいけません。
- 本業に支障がでないようにする
- 健康維持しながら働く
- 副業のペースや分量を適切に保つ
- 本業の守秘義務を守って働く
といったことを意識しながら、副業をしましょう。また、副業は、目的意識を持って取り組むことで、いきいきと楽しみながら取り組めます。やりがいある副業にチャレンジするということも、注意しておくべきポイントです。
榎本希
平成29年3月28日働き方改革実現会議決定を踏まえ、厚生労働省においても「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が作成されました。
働き方改革では、時間外労働の上限規制・有給休暇の年5日取得義務化などが導入される一方で副業や兼業を普及させていこうという動きもあり、これまで副業を禁止していた企業も副業を解禁し始めています。
副業を希望する会社員や、実際に副業を行っている人も現在は増加傾向にあります。
副業アルバイトをすると確定申告は?
副業アルバイトをすると確定申告をしなければいけません。確定申告をするべきケースについて解説します。
副業の年間所得20万円以上で必須に
確定申告を必ずしなければいけないのは、副業の年間所得が20万円以上になったときです。本業で正社員として働き、副業でアルバイトをしている場合には、本業と副業の2通の源泉徴収票をもとに確定申告します。
初めての確定申告でも、国税庁の『確定申告書等作成コーナー』を利用すると簡単に書類の作成ができるので安心です。
こんな場合は20万円以下でも確定申告を
副業しているサラリーマンは、副業の年間所得が20万円以上で確定申告しなければいけません。ただし、下記の2つに当てはまる場合には、年間所得が20万円より少なくても確定申告の必要があります。
- 給与として受け取っている年間収入が2000万円以上
- 医療費控除などを受ける
普通、給与を受け取っている場合には、源泉徴収されます。つまり、給料から所得税が天引きされるのです。しかし、年間収入が2000万円以上になると、源泉徴収されません。そのため、他の所得も合わせて申告します。そのため、年間所得20万円に満たない副業でも確定申告が必要です。
医療費控除やその他の控除などで税制優遇措置を受けるのにも、確定申告が必要です。そのため、それらの控除を受けるときには、副業の20万円より少ない所得も一緒に申告することになります。
榎本希
会社員の場合、医療費控除、住宅ローン減税、ふるさと納税などの寄付金がない場合以外は年末調整は会社で行ってもらえるため、確定申告の必要はありませんが、副業をしている場合は確定申告が必要になります。ただし、下記の場合には確定申告は不要です。
・給与が1カ所で副業の所得が20万円以下の場合
・給与が2カ所以上で年末調整をされなかった給与の収入額と副業で給与以外の所得金額の合計が20万円以下の場合(例えばアルバイトで10万円と個人事業での所得が10万円の場合など)
副業の税金対策、所得税はどうなる?
副業をすると所得が増えるので、所得税にも違いがでてきます。副業で増えた所得税はどのように処理されるのでしょうか。
本業と副業合わせた所得に対してかかる
所得税は、本業と副業を合わせた所得全体に対してかかります。そのため、所得税を計算するときには、本業の所得と副業の所得が分かる書類を用意しましょう。サラリーマンやアルバイトの給与所得であれば源泉徴収票です。
所得税を計算してみよう
所得税を実際に計算するときには、『課税される所得金額』に『所得税の税率』をかけて求めます。課税される所得金額は、給与所得・事業所得・雑所得など所得の種類によって計算の仕方に違いがあるので注意しましょう。
所得の種類 | 所得の求め方 |
給与所得 | 給与所得=給与-給与所得控除 |
事業所得 | 事業所得=売上-経費-青色申告特別控除(10万円もしくは65万円)
※青色申告の場合には特別控除10万円か65万円を引くことが可能 |
不動産所得 | 不動産所得=売上-経費-青色申告特別控除(10万円もしくは65万円)
※青色申告の場合には特別控除10万円か65万円を引くことが可能 |
雑所得 | 雑所得=売上-経費
※規模が小さいため白色申告 |
本業と副業の所得を種類ごとに計算し、それらを合算した金額が『課税される所得金額』です。この『課税される所得金額』に所得に応じた税率をかけると所得税が求められます。
2020年度確定申告分より青色申告特別控除はe-Tax利用などの要件を満たした場合には最大65万円の控除となりますが、原則は55万円となります。
不動産所得の場合事業規模と認められない場合には青色申告特別控除は10万円になります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 9万7500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 42万7500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 63万6000円 |
900万円を超え 1800万円以下 | 33% | 153万6000円 |
1800万円を超え4000万円以下 | 40% | 279万6000円 |
4000万円超 | 45% | 479万6000円 |
こうして求められた所得税からは、住宅借入金控除・寄付金控除を引くことができます。さらに、2037年までは所得税の2.1%が復興特別所得税として課税されますので『実際の納付金額=所得税の金額-住宅借入金控除など税額控除+復興特別所得税』という計算で、実際に納める所得税額が分かります。
間違えやすい、所得の考え方
所得は間違えやすいことばです。特に、所得と収入は勘違いしやすいでしょう。確定申告のときには、この2つを間違えずに区別して計算しなければいけません。
- 収入:受け取った給与や報酬の金額
- 所得:収入から経費を差し引いた金額
どんな仕事でも、仕事をするうえで経費が必要になります。その経費を差し引いたのが所得です。つまり、収入は売り上げ、所得はもうけといえます。
所得税の納付方法は2種類
計算した所得税は、正しく納付しなければいけません。所得税の納付方法は2種類です。
- 現金納付
- 振替納税
現金納付をする場合には、確定申告書と一緒に届く納付書を使います。空白の納付書ですので、計算した所得税額を書き入れて支払いましょう。納付書が使えるのは、税務署の窓口・銀行・郵便局です。確定申告の提出期限と同じ3月15日までに支払いましょう。
振替納税は、指定の口座から所得税が引き落とされる納付方法です。3月15日までに『預貯金口座振替依頼書』を提出すれば、4月中旬に引き落としされます。納付書を書いたり窓口や銀行にいかなくていい分、手間がかかりません。
また、その他にも、e-Taxや、クレジットカードを使って納付する方法もあります。
榎本希
2020年度確定申告分から基礎控除は48万円に引き上げられましたが、給与所得控除は55万円に引き下げられます。
また、青色申告特別控除も原則は55万円に引き下げられ、e-Tax利用などの要件を満たした場合には65万円の控除となります。
また、不動産の貸付けなどで得られる所得は一般的には不動産所得として扱いますが、以下の要件を満たす場合には事業規模として認められ、事業所得となります。
・アパートなどの場合、賃貸できる独立した部屋数が10室以上ある
・独立家屋の場合概ね5棟以上
・駐車場の場合は50台以上の車室がある
不動産所得の場合、事業規模と認められない場合の青色申告控除額は10万円となります。
副業の税金対策、住民税はどうなる?
副業をすると、住民税の申告が必要です。副業と住民税について解説します。
確定申告不要でも、住民税は申告が必要
確定申告は、副業の所得が年間20万円以上になったときに必要です。しかし、所得を20万円以内におさめたからといって、副業の所得について申告しなくてもいいというわけではありません。
確定申告では所得税を確定しますが、それとは別に住民税の申告が必要です。そのため、副業の所得が20万円を下回っていたとしても、住民税の申告をして副業分の住民税を支払う必要があります。
住民税決定通知書で副業が判明しやすい
副業が本業の会社に知られるきっかけの代表は、『住民税決定通知書』です。ここに副業分も合わせた住民税が記載されていて、本業の給料に対して住民税が高くなってしまうことがあります。すると、本業の会社へ副業していることが知られてしまうのです。
住民税の納付方法には、本業の給料から天引きする『特別徴収』と自分で納付する『普通徴収』があります。このうち『特別徴収』が行われる場合、本業の会社へ副業分も合わせた『住民税決定通知書』が送付されるのです。
そのため、『住民税決定通知書』から副業がバレるのを防ぎたいのであれば『普通徴収』を選びましょう。ただし、多くの自治体は『特別徴収』を推進しています。なので、副業分の『普通徴収』ができる自治体かどうか、事前に確認しておきましょう。
榎本希
副業収入が20万円以下で確定申告が不要の場合にも住民税の申告は必要となります。
勤務先が副業を禁止していなくても副業をしていることを知られたくないという場合には、確定申告の際に住民税の徴収方法を「普通徴収」と選択することで住民税の納付は市区町村から送られてくる納付書で自分で納付することになるため、会社に知られにくくなります。
まとめ
副業でアルバイトをすると、所得の年間合計が20万円以上で、確定申告をして所得税を決定しなければいけません。また、混同しやすい住民税は、所得に限らず申告が必要です。税金に関する申告を正しく行ない、副業の税金をきちんと支払いましょう。その際、正しく対策すれば、副業が本業の会社へ知られるリスクを最小限にできます。