フリーランスも年金の加入が義務
会社員や公務員の場合、国民年金に加えて厚生年金や共済年金に加入しますが、フリーランスは基本的に国民年金のみとなります。
そこで、会社組織をやめてフリーランスになると、国民年金の切り替え手続きが必要です。年金の切り替え手続きや扶養についての考え方、受け取れる年金額などを説明します。
厚生年金・共済年金から切り替え手続きが必要
振り込まれる毎月の給与から、厚生年金や共済年金を自動的に天引きされる会社員や公務員は、第2号被保険者です。一方、フリーランスなどの自営業者は第1号被保険者です。
フリーランスとして独立する際は、厚生年金や共済年金から、国民年金に切り替える手続きを自ら行う必要があります。
国民年金に扶養の考えはない
厚生年金や共済年金では配偶者や家族を扶養に入れることができます。しかし国民年金には扶養の考えはありません。それまで扶養に入っていた配偶者も、保険料を支払うことになります。
年金はいくらもらえる?計算方法紹介
フリーランスとして働いた場合、具体的な年金支給額はいくらになるのか気になるところです。年金支給額を決定する際は、『加入期間』と『免除猶予期間』などがポイントになります。計算式は以下のとおりです。
年金支給額=満額×(保険料納付月数+全額免除月数×4/8+4分の1給付月数×5/8+半額給付月数×6/8+4分の3給付月数×7/8)÷40年(加入可能年数)÷12カ月
平成31年4月からの国民年金の満額が年間78万100円なので、40年分の保険料を全額支払うと、1カ月あたりおよそ6万5000円が支給されることになります。
払わないと、どうなる?
少子高齢化が進み、国民年金制度が破綻する懸念があると言われている状況で、保険料を支払いたくないと感じる人もいるかもしれません。
しかし保険料の支払いは法律で定められている義務であり、支払わなければ法律違反となります。国民年金を支払わないとどうなるのでしょうか。具体的に説明します。
不払いは差し押さえの可能性がある
国民年金を支払っていない場合は、強制徴収手続きの対象となります。国はその手続きの基準を厳格化していて、控除後の所得額が年間300万円以上かつ未納月数が7カ月以上だと、差し押さえなど強制執行の対象になると規定しています。
年金滞納者への対応が厳しくなって、実際に差し押さえられている数も増えています。国民年金の不払いは、給与や土地などの財産を差し押さえられる可能性があるので、くれぐれも気をつけましょう。
参考:「国民年金保険料強制徴収集中取組期間」の結果について|国民年金機構
障害年金や遺族年金を受給できない
保険料の滞納や未納が続いた場合、老齢基礎年金だけでなく、障害年金や遺族年金を受給することができなくなります。障害年金や遺族年金は普段はあまり意識されませんが、思わぬ事態が起こったときに役立つものです。
心身に障害を負ったときに給付がある障害年金は、医療保険のような役割を果たします。遺族年金は、世帯主の年金加入者が死亡するとその家族が給付できるのです。年金をきちんと納めることは、将来だけでなく、現在の自分や家族を守ることにもつながります。
賢く利用して支出を抑えよう
毎月の収入の中から国民年金をきちんと支払うことが、経済的な負担になる人もいるでしょう。独立したばかりのフリーランスはまだ収入が少ないことも考えられるので、できる限り支出の負担は減らしたいものです。
ここでは、年金支払いの支出を抑える方法をいくつか紹介します。
控除、免除の制度がある
確定申告の際に、日本年金機構から送付される『国民年金保険料控除証明書』を利用することで、社会保険料として所得から控除し、節税につなげることができます。
また、失業や出産などが原因で所得が少なく保険料を収めることが困難な場合は、申請書を提出して承認されると、保険料の全額や一部が免除される制度があります。必要な場合には申請してみましょう。
例えば4分の1免除を受けられる基準の所得は、『158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等』となっており、もっと免除を受けたい場合はさらに低い所得が基準です。
前納すると納付額が割引
国民年金保険料を2年分まとめて全納すると、2年間で約1万5000円が割引される『2年前納』という制度があります。口座振替だけでなくクレジットカードでの納付も可能です。利用することで納付金額を減らすことができます。
年金事務所で対応してもらえるので、経済的に多少余裕がある場合は2年前納の制度の利用を検討してみることをおすすめします。
配偶者や子供の年金も所得控除の対象
配偶者や子供などの扶養家族がいて、家族の分の保険料を支払っている場合は、その家族分の国民年金も所得控除の対象です。
自分の支払いだけでなく家族の支払いも所得から差し引くことができるので、課税額を下げることが可能です。家族が多ければ多いほど、所得控除できる金額が多くなるので、節税効果が高くなります。
国民年金だけでは不安。対策は?
国民年金だけでは、厚生年金に加入者と比べると、受け取れる年金額は少なくなります。ここでは、国民年金以外にできる、老後の対策について紹介します。国民年金基金を利用する
会社員には国民年金に加えて厚生年金や企業年金など老後の手厚い保障がある一方で、自営業者やフリーランスは国民年金だけしか整備されていないという時期がありました。
そこで両者の年金差を解消するために設けられたのが『国民年金基金』です。国民年金基金は通常の老齢基礎年金に加えて任意で加入できる自営業者のための保障制度です。
加入すると、受け取れる年金額が増えるだけでなく、掛け金の全額が所得控除の対象になるので、所得税や住民税が軽減されるメリットもあります。
しかし任意による解約ができないことから、支払いが継続できなくなるケースなども考慮して、よく検討してから加入する必要があります。
個人年金や資産運用はリスクを把握して検討
民間の保険会社が提供している『個人年金』も、自営業者やフリーランスの老後対策として利用できます。
一般的には途中解約すると元本割れするリスクがありますが、さまざまなタイプの個人年金を各保険会社が用意していて、リスクを最小限にした商品もあります。自身に合った個人年金を見つけることが重要です。
また、老後の資金確保のために『資産運用』をするという方法もありますが、投資にはリスクが伴うので、よく検討して選ぶことが必要です。余剰資金がある際に検討してみるとよいでしょう。
個人年金や資産運用は、うまく利用することで有効な老後対策になります。それぞれのリスクを事前に把握してから導入を検討するようにしましょう。
まとめ
会社や組織に属していると年金や健康保険などの社会保障制度が充実していますが、フリーランスや自営業者は自分自身で全てまかなう必要があります。
自分や家族の身は、自分たちで守ることが大切です。年金に関する知識を深め、安心して老後を過ごせるように対策を立てましょう。