フリーランスを悩ませる経費の線引き
フリーランスになると経費を計上することになります。経費になるものとならないものの線引きはどこでするのでしょうか。経費のメリットと経費になるものについて解説します。
経費計上するメリットは節税効果
経費は事業のために必要な支出のことです。経費を漏れなく計上することは、節税につながります。なぜなら、所得税や住民税などの税金は、収入から経費を引いた金額に課されるからです。そのため、経費が多くなればなるほど、課税される所得は少なくなります。
フリーランスは経費がかかりにくい傾向があります。そのため、経費にできるものは漏れなく経費として計上することが、節税のためのポイントなのです。
フリーランスはどんなものを経費にできるのか
フリーランスは具体的にどのような費用を経費にできるのでしょうか。フリーランスが経費にできるものについて解説します。
- 家賃:仕事に使っている分のみ計上、面積で按分するのが一般的、自宅兼事務所の場合には30~60%ほどが目安、地代家賃
- 光熱費:仕事に使っている分のみ計上、時間で按分するのが一般的、自宅兼事務所の場合30~60%ほどが目安、水道光熱費
- 駐車場・ガソリン代・車検代など車にかかる費用:仕事に使っている分のみ計上、走行距離で按分するのが一般的、月極なら地代家賃・コインパーキングなら旅費交通費
- 交通費:バス・電車・タクシーなど、領収書が発行されない場合には出金伝票に日付・路線・金額・内容を記載する、旅費交通費
- ポートフォリオサイトの制作費:広告宣伝費
- サーバー代・ドメイン代:通信費
- 名刺:広告宣伝費
- 請求書送付のための切手代や封筒代:切手は通信費、封筒は消耗品費・事務用品費などで計上
- 取引先などへの贈答品:接待交際費
- 取引先などの冠婚葬祭のご祝儀:接待交際費
- インターネット:仕事に使っている分のみ計上、使用時間で按分するのが一般的、通信費
- スマホ代・電話代・FAX代:仕事に使っている分のみ計上、通信費、端末代も消耗費として計上できる
- 資料用の書籍代・雑誌代:新聞図書費
- 素材集・写真素材・Webテンプレート:広告宣伝費
- セミナー参加費:研修採用費
- 事業に関係する飲み会など飲食代:接待交際費
- カフェで作業したときのコーヒー代:ノマドワークなら雑費、打合せなら接待交際費・会議費、ただし食事代は計上できない
- 振込手数料:支払手数料
- Web製作費の外注:外注工賃
- パソコン代:10万円未満なら消耗品費、10万円以上なら原則減価償却で処理
- 広告代:広告宣伝費
事業のために必要な支出は全て経費になります。見落としていた経費がないか確認し、漏れなく計上していきましょう。
30万円未満の経費は一括計上できる?
10万円未満の経費は1度に経費として計上できますが、10万円以上の経費は基本的に原価償却という処理方法になります。ただし、条件を満たせば30万円未満の経費は1度に計上することができるのです。30万円未満の経費を1度に計上するための条件について解説します。
少額減価償却資産の特例を利用すれば可能
『少額減価償却資産の特例』は、30万円未満の経費を購入した年に1回で経費に計上できる制度です。原則として10万円以上の備品などは、減価償却によって処理します。耐用年数が定められていて、その年数の間決められた割合で毎年経費を計上しつづけなければいけないのです。
しかし、『少額減価償却資産の特例』を利用すれば、その必要がなくなり、30万円までは一括で経費にできます。
ただし、この制度は期間限定のものです。もともとは2018年3月31日までの適用でしたが、2018年の税制改正で2020年3月31日まで延長されることが決定しました。
利用できるのは青色申告者のみ ※白色は10万円未満
『少額減価償却資産の特例』の対象になるのは、青色申告書を提出している事業者です。白色申告をしている事業者の場合には、一括して計上できる経費は10万円までとなっています。
青色申告をしているフリーランスが『少額減価償却資産の特例』を使用する場合には、下記のどちらかを確定申告のときに行います。
- 明細書を添付する
- 減価償却費の計算欄に、特例を利用することと、合計額を書き入れる
ただし、1年間で300万円が限度
『少額減価償却資産の特例』を使う場合には、全体の合計額が決まっています。1年間で300万円までです。300万円までは特例を使って一括で経費にできますが、300万円を超える部分については減価償却することになります。
例えば、25万円のパソコンを15台購入するとします。この場合、300万円に到達する12台目までは、特例を使って経費として一括計上が可能です。しかし、残り3台分は、減価償却で処理することになります。
領収書やレシートが経費の証拠
経費として計上する場合には『少額減価償却資産の特例』を使うときにも、その証拠となる書類が必要です。
- 領収書
- レシート
- 出金伝票
上記の3点が経費の証拠となる書類です。領収書やレシートには7年間の保管義務がありますので、なくさないように整理して保管しておきましょう。
パソコン購入を例に、価格別に考えてみよう
では実際に経費を計上する場合には、どのように処理すればいいのでしょうか。パソコンの購入を例に、価格別に計上方法を解説します。
購入金額によって計上方法が異なる
パソコンを購入した場合、金額によって処理の仕方が違ってきます。
- 10万円未満:「消耗品費」として、購入した年の経費に一括で計上
- 10万円以上~20万円未満:原則として減価償却で処理、「一括償却資産」として1/3ずつ3年間にわたり処理することも可能
- 30万円未満:青色申告をしている事業者なら『少額減価償却資産の特例』が使用可能、購入した年に経費として一括計上できる
そのため、10万円を超える買い物をする場合には、経費の処理方法にも注意しなければいけません。
30万円未満の経費を一括計上するメリット
『少額減価償却資産の特例』を使うメリットについて解説します。
耐用年数を調べる労力が省ける
特例を使うと、30万円未満の経費を一括で計上できるので、耐用年数を調べる手間を省けます。耐用年数は法律で定められていますが、調べるのは面倒なものです。
しかし、10万円以上の備品を固定資産として処理するときには、耐用年数を調べなければ処理ができません。減価償却は法律で定められた耐用年数をもとに行う処理方法だからです。そのため、減価償却で処理することになると、耐用年数を調べなければいけなくなってしまいます。
特例を使えば耐用年数を調べなくても処理できるので、面倒な手間を省けるというメリットがあるのです。
経費を前倒しで多く計上できる
経費を多く計上できるのも特例のメリットです。通常であれば原価償却して数年にわたり処理しなければいけないものを、一括で経費にできます。そのため、できるだけたくさん経費として計上したいというときに、有利になるのです。
例えば、デスクは償却に15年もかかる
減価償却するときに使うのが耐用年数です。耐用年数というのは、備品を使える年数で、法律で定められています。減価償却で処理する場合には、耐用年数に応じて少しずつ経費として処理するのです。
今年デスクを購入して、減価償却で処理することにした場合、デスクの金額を経費として全額計上するまでには15年間かかります。デスクの耐用年数が15年と定められているからです。
他にも、小型車は4年・時計は10年・テレビは5年・パソコンは4年、という具合に、それぞれの耐用年数が決まっています。
一括計上するか、減価償却するかは自由
30万円未満の備品を購入したとき、どのように処理するか決めるのはフリーランスです。特例を使い一括でその年の経費に計上するのも、固定資産として原価償却するのも、自由に決められます。
ただし、1度決定した処理の方法を後から変えることはできません。購入したときに減価償却をすると決めたなら、2年目以降も減価償却で処理していくのがルールです。
そのため、利益が多く出た年であれば、特例を使って一括計上し、税金対策の役割を持たせるということができます。また、利益が少ない年には、減価償却にして利益を減らさない選択をすることも可能です。
まとめ
フリーランスが10万円以上の備品などを買うとき、原則として固定資産として減価償却することになります。ただし、青色申告をしている場合に限り『少額減価償却資産の特例』を使うことで、30万円未満の備品の金額を一括で計上できるのです。
どちらの方法で処理するかはフリーランス本人が選びます。そのときの状況によって、最適な方法を選び、正しく経費を計上しましょう。