サラリーマンの副業は個人事業主になる?
サラリーマンとして会社に雇用されながらも、個人で事業を行なって副収入を得ている人は増えています。本業とは別に副業をやっている場合、だれでも個人事業主という扱いになるのでしょうか。
独立・継続・反復していると個人事業所得に
そもそも、副業と個人事業の線引きはどこなのでしょう。個人事業でポイントとなるのは、『独立・継続・反復しているかどうか』です。一度だけの場合や、不定期の単発の仕事などの場合は、継続・反復していないため、副業ではあっても個人事業ではありません。
たとえサラリーマンをしていても自分で仕事を行い、継続・反復している仕事がある場合は、その仕事は個人事業であり得た収入は事業所得になるのです。個人事業を行っている場合は、税務署に開業届を出すことが定められています。
副業が個人事業の際の社会保険と税金は?
サラリーマンであれば、会社を通して健康保険と厚生年金保険に加入していますが、個人事業主は自分で国民健康保険と国民年金保険に加入しています。社会保険はどちらか一方しか加入できません。そのため、サラリーマンが個人事業を同時に行っている場合は、会社側の義務である健康保険・厚生年金保険の方に継続して加入し続けることになるため、特に手続きはありません。
税金は、所得税と住民税、場合によっては消費税が課税されますが、1年の総所得金額に税率をかけて計算します。そのため、サラリーマンの給与所得と、副業の事業所得の合計に対して税率をかけ、課税される税金が決定します。
アルバイトの場合は給与所得に
会社員としての本業があり、退勤後や休みの日に別の雇用先でアルバイトを行なうことは、副業になります。会社に雇われて働いていれば、独立しているわけではないため個人事業主とは言えません。そのため、副業のアルバイトの収入は給与所得扱いになります。
榎本希
会社員が副業を行っているからといって個人事業主であるとは限りません。
個人事業主とは法人格を持たず個人で事業を行っている者を指します。
ここでいう事業とは、反復・継続して行っている者です。
個人事業主となった場合には開業届を提出することが所得税法により定められています。
なお、会社員が副業として個人事業西になった場合であってもアルバイトとして給与所得を本業以外で得ている場合でも、社会保険については会社で加入している社会保険のままになりますので特に手続は必要ありません。
サラリーマンの副業、確定申告は必要?
確定申告は、1月1日から12月31日までの1年の間に、どれくらいの収入があったかを申告し、最終的に確定した金額に応じて納税するという制度です。副業をやっているすべての人が、確定申告が必要というわけではありません。
副業が個人事業であり、かつ事業が赤字であるケースなどは、確定申告をしなくても良いのです。ほか、給与所得・退職所得が2000万円以下で、副業の合計金額が20万円以下の場合は、確定申告の必要はありません。
確定申告はなぜ必要?
本業がサラリーマンのみという人は、会社が年末調整という制度で、代わりに納税額を算出します。副業をやっている場合は、会社が副業分の収入を把握できないため、その部分のみ自分で所得の合計額を算出し、申告します。これが確定申告です。
確定申告をしなければ、赤字が出ている個人事業のケースは、青色申告のメリットである赤字繰り越しが出来ず、さらに最大65万円控除も受けられません。また、納税額が多く算出されていた場合、本来であれば正しい金額に調整されるはずの差額分が返還されなくなります。また、所得証明には本業のサラリーマン分しか記載されないため、所得の大きさに関わった契約がある場合や、申請するものがある場合は不利に働いてしまうのです。
収入から経費を引いた所得20万未満は不要
副業の収入が給与所得でない人で、さらに副業での所得が1年間で20万円未満のひとは、確定申告しなくてもOKです。この場合の所得とは、収入から経費を引いた金額のことを言います。
給与所得以外の収入とは、自分で事業を起こして収入を得るほかにも、ブログの広告収入やフリマアプリでの収益、原稿料や講師料として見返りを得た、等様々な形があります。本来は確定申告が必要なのですが、年間20万円未満で、生計が成り立つほどではない少額と判断される場合は、例外扱いされるのです。
少額の副業所得は、事業所得ではなく、雑所得に分類されますが、これはケースにもよるため一概には言い切れません。副業の所得が1年間で20万円以下でも、これが給与所得であれば必ず確定申告が必要です。
榎本希
確定申告とは「○年1月1日から12月31日までにこれだけの利益が出たので税金が●円発生します」ということを明らかにすることが目的です。
個人事業主は赤字の場合には確定申告の必要がないと聞くかと思いますが、これはつまり利益がなければ税金は発生しないため、赤字の場合には確定申告をしなくても良いということなのです。
また、副業所得が20万円以下の場合には確定申告は不要ですが、副業での収入が例えば原稿料や講演料の場合には報酬が支払われる際に源泉所得税が徴収されているはずです。場合によっては確定申告をすることで所得税の過払い金が戻ってくることもあります。
副業の確定申告の書き方・やり方
ここでは、確定申告のやり方と、書類の書き方について説明します。時期が来てから慌てないように、早めにチェックしておきましょう。確定申告の際に必要な書類は、確定申告書Aの第一表・第二表、給与所得の源泉徴収票、副業の報酬・料金・契約金などの支払調書、所得の内訳書です。
所得税法の所得種類をチェック
副業と一言で言っても、所得は様々な種類に分けることが出来ます。所得税法上は、所得は10種類あります。
先に説明した事業所得、給与所得、雑所得のほか、退職所得、利子所得、配当所得、不動産所得、山林所得、譲渡所得、一時所得があります。マンション経営をしていれば不動産所得、ネットビジネスやブログのアフィリエイト収入であれば雑所得、という具合に、内容によって分類が異なり、課税計算の内容も変わります。
必要書類を用意しミスない様に記載しよう
副業が給与所得か、それ以外の所得かによって、確定申告に必要な書類は異なります。本業・副業ともに給与所得の場合は、両方の源泉徴収票が必要となります。確定申告の時期が近付いたら、必ず出してもらうようにしましょう。
副業が給与所得でなければ、源泉徴収票は本業の分のみ必要です。副業の所得は、通帳や領収書、請求書を確認して自分で所得を計算します。
確定申告書Aは、第一表と第二表の2つです。第二表は、給与所得や事業所得、雑所得と必要経費、住民税の徴収方法、保険料控除に関する記載をします。第一表は、第二表に書いた内容を元に、収入金額、所得金額、控除などで所得から差し引かれる金額や、税金計算後の数字を記載します。
榎本希
確定申告の際に提出する確定申告書はAとBがあります。
給与所得、公的年金、雑所得、一時所得など場合には用紙は確定申告書Aを使用することが多いです。
副業が個人事業主である場合は確定申告書Bを使用します。
所得の種類は10種類に分類されていますので、副業の所得が給与以外でどの所得に分類されるのか自分で分からないような場合には税務署や税理士に相談すると良いでしょう。
副業が会社にばれない様にするために
副業をしていることで会社に居づらくなったり、気まずかったりするケースはあるでしょう。
マイナンバー制度が発足した際には、副業がばれてしまうことを心配した話題が増えました。実は、会社がマイナンバーを利用して、個人の副業を調べることはできません。では、どうして会社に副業がばれてしまうのでしょうか。
確定申告不要でも住民税申告は自分で
会社に副業がばれるケースは、会社に届く住民税の金額通知が、会社からの給与所得に見合わない額だった場合です。住民税の金額が、本業と副業を合算した分で算出されていれば、会社の総務経理は金額のズレに違和感を覚えることもあるでしょう。
副業の所得金額が1年間に20万円以下の場合は、所得税の確定申告は不要ですが、住民税は20万円以下でも必要です。会社に副業がばれないようにしたい場合は、市区町村に『住民税の申告』を自分で行ないましょう。
自分で住民税を申告するなら、住民税通知は『普通徴収』として自宅に届きますが、住民税を給与天引きにしていれば、住民税通知は『特別徴収』として、会社に送付されます。
住民税は普通徴収で
住民税の徴収方法を、会社からの天引きではなく、自分で納付するようにすれば本業の会社には確認できません。サラリーマンの給与所得分の住民税納付書は勤務先に届けられ、事業所得分の住民税納付書は自宅に届くため、会社が確認できないのです。
住民税の徴収方法の申請は、市区町村で『給与・公的年金などに係る所得以外の住民税の納付方法』という書類で普通徴収の申請にチェックを付けるだけです。もしくは、確定申告書の中の住民税の徴収方法の欄の『自分で納付』にチェックを入れておきます。
榎本希
副業を禁止していない企業に勤務しながら副業を行っている場合でも、副業を行っていることを知られたくないという場合には、確定申告の際に住民税の徴収方法を「普通徴収」に選択することで、住民税は自分で市区町村から送付される納付書で納付することになるため、会社に副業を知られにくくなります。
副業の知っておきたい税金対策
副業を行なう上で、税金対策が出来る制度を知っていることは大きなメリットとなります。納めすぎている税金を還付されたり、帳簿の種類を変えて事前に確定申告の種類を申告したりするだけで、特別控除が受けられるなど、大きな恩恵があります。
赤字の場合は損益通算で税金対策を
副業が赤字の場合に可能な税金対策が、『損益通算』です。これは確定申告の際に、本業の給与所得で赤字を相殺し、全体の収入を算出します。これにより、給与天引きで納めすぎていた分の所得税が還付されるという制度です。
副業のマイナス分を、損益換算することで税金の軽減と還付金という形でカバーすることが出来ます。しかもこの損益通算上では、赤字を向こう3年間は繰り越しできるのです。自分の都合の良いタイミングで、赤字を相殺することも可能となっています。ただし副業の種類によっては、税金対策が出来ないものもあります。雑所得は、損益通算が適用外となってしまいます。
青色申告は白色申告より節税効果代大
確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告は、『所得税の青色申告承認申請書』を、開業2ヶ月以内に税務署に提出する必要があり、さらに自分で帳簿を付ける手間がかかりますが、高い節税効果が得られます。
青色申告の中でも、帳簿が単式簿記か、より複雑な複式簿記かによって、10万円の特別控除か、最大65万円の特別控除か決まるのです。白色申告は、申請する必要はありませんが、青色申告と同様に帳簿を付ける必要があり、節税効果は低いという特徴があります。
本格的に副業をしている人は、断然青色申告がおすすめです。サラリーマンの給与所得が収入のほとんどで、副業の所得は事業というほど多くない場合や、副業の所得が雑所得の場合は、白色申告でも良いでしょう。雑所得は、青色申告特別控除には当てはまらないためです。
榎本希
個人事業主で副業をこれから行う場合に、事業を開始する前にかかった経費がある場合には「開業費」とすることができます。開業費は任意償却ができるため、所得が多い年度に開業費を償却するという形での節税も行う事ができます。
また、青色申告を行う場合にはe-Tax利用がお勧めです。
2020年度の申告分より青色申告特別控除は原則55万円となりますが、e-Tax利用などの要件を満たしている場合には65万円の特別控除が受けられます。
まとめ
副業が軌道に乗りある程度の所得が出てきたら、確定申告をきちんと行う必要があります。確定申告は手間ではありますが、行なうことでのメリットは大きく、知識を付けていればそう難しいものではありません。申告をしなければペナルティを受ける制度ではありますが、それだけ重要な制度といえます。確定申告の正しい知識をつけて、ミスなく手続きを済ませましょう。