そもそも確定申告とは
会社員の場合は、確定申告になじみがない人も多いでしょう。しかし、自営業・自由業の人たちは必ずしなくてはなりません。そもそも、確定申告とは何なのでしょうか?
基本的なことから、少し詳しく見ていきましょう。
確定申告とは
『確定申告』とは、基本的に1年間の所得を計算したものを税務署に申告して、納めるべき税金を納入するための手続きです。
2019年に関しては、2月18日(月)から3月15日(金)までが申告期間になります。
また『源泉税』として先に納めてある場合は、申告によって納めすぎた税金が『還付』される、つまり、戻ってくるケースもあるでしょう。
なお、確定申告は
- 青色申告
- 白色申告
の2種類です。これは、所得の種類によって分かれています。
会社員だとなぜしなくていいのか?
会社員の場合は、会社が税務処理をやってくれるので、自分で確定申告をする必要はありません。
普通は毎月の給料から『源泉徴収』をします。『住民税』など、あらかじめ予想される税額が天引きされているのです。
そして12月の時点でその年の収入から計算された所得に基づいて、もし、先に徴収した額が多すぎた場合には、還付されるでしょう。
この計算に関しても個人に申告の必要はなく、会社がまとめてしてくれます。そのため、会社員は多くの場合、税務署に行く必要がないのです。
榎本希
確定申告とは「○年1月1日から12月31日までにこれだけ利益が出たので○円税金が発生する」ということを明らかにするのが目的です。
会社員の場合は会社で年末調整を行ってもらえるので副業をしていたり医療費控除等を受ける場合以外は必要ありませんが、個人事業主は確定申告が必要です。
確定申告には青色申告と白色申告があり、青色申告承認申請を提出していない場合には自動的に白色申告となります。
確定申告はいくらから必要?
所得を得ている人は、会社員を除いてすべての人が確定申告をしなければならないのでしょうか。
必ずしもそういったわけではなく、ある条件に該当するかどうかによって、決まります。具体的に確認しましょう。
本業での所得が20万円以上の場合
結論から言えば『所得』が20万円を超える人が、確定申告の対象になります。仮に副業をしていても、所得が20万円未満であれば、しなくても問題はありません。
ただし、その20万円の所得とは『収入』が20万円であるのとは意味が違います。所得と収入はまぎらわしいので、ここではっきりと確認しておきましょう。所得とは、収入から経費を引いた残りの『儲け』部分のことです。
店で物を売る商売であれば、売り上げからまず仕入れ金額を引いて、さらにそれらを仕入れるためや、売るために使った『経費』を引いたものが初めて所得になります。
その場合は仕入れに行くための出張費、店の家賃、売るための広告費などが経費にあたります。副業の人の場合も、それをするための経費を引いたあとに残る金額が所得です。それが20万円を超えるかどうかが、確定申告をするかしないかの目安になります。
20万円以下でもした方がよい場合
実は、副業の所得が20万円を下回る場合でも、確定申告をした方がよい場合があります。以下のいずれかに当てはまるなら、確定申告の必要があるので、気をつけましょう。
- 年末調整をしていない場合
- 副業かどうかにかかわらず確定申告の必要がある場合
- 給与以外にも収入がある場合
- 医療費控除・住宅ローン控除・寄附金控除を受ける場合
また、副業の所得が20万円以下で、非課税であっても『住民税』に関してはすべての収入を合算して計算されます。額にかかわらず、住民税の申告は行いましょう。
ただし、確定申告をすれば、住民税は自動的に地方自治体にデータが回り、連動して計算されるため、住民税を別途申告する必要はありません。
榎本希
確定申告は会社員で副業をしている場合、副業の所得が20万円以上・本業での所得が2000万円以上ある場合・医療費控除や住宅ローン控除などを受ける場合には確定申告が必要です。
副業所得が20万円以下の場合には確定申告の義務はありませんが、副業の内容が原稿料や講演料として報酬を得ているものであれば確定申告を行った方が良いケースがあります。
確定申告の経費はきっちり申告しよう
確定申告では収入と所得をはっきりと区別するために、副業にかかった経費はきっちりと申告しましょう。
経費を差し引かなければ、収入額が所得になってしまい、払わなくてもよい額の税金を払うことになりす。
それでは、副業の経費とはどのようなものが該当するのでしょうか。その考え方と具体例を紹介していくので、参考にしましょう。
経費とは
経費とは、収入を得るために要した費用です。給与所得者は給与額に応じて、『みなし控除額』が決められていて、自動的に『給与所得控除』がなされます。
副業においては、それに関連する経費を差し引ける場合があります。
会社員の副業で経費が認められる所得は3種類です。
- 『事業所得』
- 『不動産所得』
- 『雑所得』
が該当します。
たとえば、自宅で開業している場合、その事業に必要な敷地分に相当する固定資産税の一部を経費として計上することが可能です。
副業の経費の具体例
副業で経費として認められる具体例を表にまとめました。副業の種類によって内容は異なるため、注意が必要です。
副業の種類 | 経費の項目 | 具体的な例 |
物販 | 商品にかかわる費用 | 商品の仕入れや保管に要する費用 |
取引先にかかわる費用 | 取引先との交際費等 | |
広告費 | 商品や店舗を宣伝する広告費用 | |
フリーランス | 業務に関連する備品 | 10万円未満のPC・カメラ・事務机等 |
通信費 | 電話代・インターネット費用等 | |
不動産賃貸業 | 賃貸物件かかわる税金 | 賃貸物件の固定資産税・不動産取得税等 |
賃貸物件の光熱費 | 賃貸物件の水道・ガス・光熱費など(賃借人負担分を除く) | |
外注費 | 管理会社に支払う費用等 | |
共通項目 | 仕事にかかわる諸々のもの | 文具や参考書籍 |
通信費 | 仕事用の携帯電話料金等 |
副業で経費は認められる?副業の経費について | クラウド会計ソフト freee
私費と事業費で按分しよう
自宅で副業の業務をおこなっている場合
- 家賃
- 固定資産税
- 電気
- 水道
- 光熱費
などが部分的に経費として認められるでしょう。
しかし、それらの支払いは一括なので、按分が必要です。計算は、以下のようになります。
仕事に要した額=支払総額×仕事で使う割合(事業割合)
これを『家事按分』といい、項目ごとに按分比率の計算方法が違うのがポイントです。たとえば、自宅の面積全体の中で、仕事場の面積にどれぐらいとっているかは『面積割』で求めます。
電気・水道代の場合は、1日のうち何時間業務中に使用しているかという『業務時間』で考えるでしょう。自動車に関する経費(ガソリン代など)なら、仕事用の車の『走行距離』から計算します。
榎本希
副業の所得は「売上-経費」となります。そのため、経費の金額により所得も変わってきます。
しかし、どこまでが経費になるのか?家事按分などどこまでを経費としていいのかがわかりにくい部分もあります。
特に最初の確定申告では戸惑う場面も多いかと思います。
そのような場合には自己判断で行うより、税務署の無料相談や税理士などの専門家に相談して正確に経理を計上すると良いでしょう。
確定申告は青色申告・白色申告どっちがよい?
確定申告には『青色申告』と『白色申告』の2種類があります。
会社員にはほとんどピンとこない、その二つの申告方法はどのような条件で分かれているのか、副業の場合にはどちらの申告方法がよいのかを解説しましょう。
青色申告の方が節税効果が高い
白色申告と青色申告では、青色申告の方が節税効果は高いと言えます。その理由は『控除額が大きい』点です。
最大のメリットは、青色申告の場合、無条件で65万円の控除が受けられます。
020年度確定申告分から青色申告特別控除は原則55万円となり、e-Tax利用などの要件を満たした場合のみ65万円の控除となります。
つまり、収入額から経費を差し引いて65万円だった場合は、所得はゼロという認識になるため、課税対象にはなりません。
それ以上あったとしても、所得税は節税できるでしょう。
そのうえ、所得税の課税の程度は、住民税にも連動するので、住民税の額も低くなるのです。住民税はゼロにはなりませんが、低くすることはできます。
白色申告の方が簡単
青色申告と白色申告の手間を比較すると、白色申告の方が簡単です。
従来は、白色申告の方が「シンプルで簡単だ」と言われてきました。2014年以降、白色申告も帳簿の提出が義務づけられてからは「手間に差がなくなった」という声もあります。
しかし、実際はそうでもありません。具体的に言えば、青色申告の場合は『複式簿記』による『帳簿』を用意しなければなりません。
一方、白色申告の場合は、必要経費や収入金額がきちんと記載されている『家計簿』レベルのものでよいのです。
もちろん、青色申告にすれば大きな節税効果のある人は、そうするのがベターですが、やはり、白色申告の方がシンプルで容易にできるでしょう。
青色申告10万円控除という選択肢も
青色申告には、最大65万円の青色申告特別控除とは別に『10万円の控除』があります。要点は下記の3点です。
- 最大10万円の青色申告特別控除は簡単な帳簿づけで可能
- 白色申告の帳簿づけとの違いはお金の出入りも記録すること
- 青色申告10万円控除なら簡易帳簿でもいろいろな青色申告特典を受けることが可能
特別控除は、65万円か10万円かを選ぶというわけではありません。65万円控除のための要件を満たせない場合には、10万円控除になるという仕組みです。
65万円の控除の要件として「事業所得や不動産所得に関する取引を複式簿記で記帳する」というものがあります。慣れていない人にとっては、難しい条件となるでしょう。
しかし、青色申告特別控除なら、複式簿記ではない簡単な記帳方法であっても青色申告が認められるため、最大10万の控除が受けられます。
65万円控除には、ほかにも要件がありますが、当てはまらない場合でも10万円の控除は可能です。
青色申告の10万円控除とはなにか? 白色申告との違い|スモビバ!
榎本希
2020年度確定申告分より青色申告特別控除は原則55万円となり、e-Tax利用などの要件を満たした場合にのみ65万円の控除を受けられます。
基礎控除が48万円に引き上げられたため、青色申告で要件を満たし65万円の控除を受けられる場合には年間で113万円までは所得税がかかりません。
なお、青色申告特別控除を受ける場合にはその年の3月15日まで(年度途中に開業した場合には開業日より2ヶ月以内)に申請の必要があります。
期間を過ぎてしまった場合はその年度の確定申告は自動的に白色申告となります。
確定申告の手順・方法について
それでも、必要なときがきたら行う必要があります。いざというときのために、確定申告の手順と方法について、触れておきましょう。
領収書などは普段から保管しておこう
確定申告に使う領収書などは、紛失しないように普段からしっかり管理しておきましょう。
本来なら必要経費として控除できるものができなくなってしまい、税金が増えるのは嬉しいものではありません。
また、領収書は、レシートで通用する場合もあれば、ちゃんと手書きされた領収書であったとしても認められない場合もあります。
領収書に必要な項目は以下の通りです。
- 領収金額
- 宛名
- 取引内容
- 受領日
- 発行者の名前と所在地
- 発行者の捺印
領収書として認められるかどうかは、経費の証明になるいくつかの点の記載が、ちゃんとなされているかどうかで決まります。
確定申告書を記入して提出
確定申告の申請書にはAとBの2種類あり、申告内容によって選びます。
たいていの会社員は『申告書A』になります。個人事業主およびフリーランスで収入を得る人は『申告書B』です。ちなみに申告書Bは誰でも使用できます。
申告書Bは、申告書Aよりも書くべき内容が多くて複雑です。ここでは、Bを選んだ場合に必要なデータと書き方を紹介します。
必要なデータ
申告書Bに添付する必要があるものは、以下の通りです。主に以下のような書類を用意し、これらを見ながら申告書の各欄を埋めていくことになります。
- 源泉徴収票
- 収支内訳書(白色申告者)
- 青色申告決算書(青色申告者)
- 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
- 医療機関の領収書(医療費控除のため)
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 寄附金の受領書(寄附金控除のため)
確定申告書の記入方法
個人事業主やフリーランスは申告書Bを使用します。ここでは申告書Bの記載についての記入方法です。
- 『収入金額』欄は1月1日〜12月31日までの所得合計を記入
- 『所得金額』欄は収入から経費を引いた額を記入
- 『所得から差し引かれる金額』は所得からの控除額を記入
- 『税金の計算』欄は税額を記入
総所得から控除額を引いて所得税率を掛けたものが税額になります。
青色申告の場合は事前の申請が必要
青色申告をする場合は、事前に最寄りの税務署に『所得税の青色申告承認申請書』というA4用紙1枚を提出する必要があります。申請書は税務署においてあるので、用意しなくても大丈夫です。
また、国税庁のウェブサイトから申請書の用紙のPDFファイルをダウンロードして、プリントアウトしたものにあらかじめ記載してから、税務署へ持って行く方法もあります。
榎本希
経理はまとめて行うよりも例えば週に1回など決まった時期に記帳を行っておくと確定申告に時期になってから慌てて計算するよりもミスがなくなります。
会計ソフトを活用するなども経理の手間を減らすのに役立ちます。
確定申告はe-Taxであれば生命保険控除を受けるために添付書類など一部書類の添付が省略できます。
最初の確定申告時は開業費の償却やどこまでを経費として計上して良いのか分からない場面も多いと思いますので、税務署の無料相談や税理士などの専門家に相談すると正確に確定申告ができるでしょう。
確定申告をすると会社にばれる?
近年は国が推奨する『働き方改革』の影響もあり、副業を持つ人は増えつつあるでしょう。
厚生労働省が発表した改正後の『モデル就業規則』では、それまでは原則禁止だった副業が原則容認に変更されています。
しかし、副業が認められていない企業もまだまだ多いのが現状です。正社員として働いている人が、職場にばれずに副業をするための重要なポイントについて、詳しく解説していきます。
ばれたくないときは住民税に注意
副業をしていて、勤め先にはばれないように細心の注意を払って内緒にしていたのにもかかわらず、それがばれてしまうことは、実際にあります。
誰かに副業の現場を見られて密告されたわけでもなく、心当たりが全くない場合はどう考えるべきでしょうか。
そのような場合、たいていは『住民税』がきっかけとなってばれているケースが多いのです。副業がばれないようにするためには、住民税について、より注意を払う必要があります。
しかし、なぜ、住民税によって発覚してしまうのでしょうか。その仕組みを解説しましょう。
ばれる仕組み
企業が従業員に給料を支払うと、その人が住んでいる地方自治体に『給与支払報告書』を提出します。
役所は、その人が給与を得ている全企業から給与支払報告書を受け取って、給与支払報告書に記載されている額を合算するのです。
さらに、住民税の額を計算して『住民税決定通知書』を作り、企業へ通知します。
たとえば、前年度と今年度で支払われた給与金額は同じなのに、住民税の額が前年度より増えていると、給与以外の収入があるという事実が勤め先に分かります。
そこから「何か副業をしているのではないか?」と疑われる場合があるのです。
徴収方法を普通徴収に変更しよう
企業では、個人の毎月の給料から住民税の天引き分を会社が代わりに納付するという仕組みです。これが『特別徴収』といいます。
住民税から発覚することを避けるには、住民税を特別徴収から『普通徴収』に変更すしましょう。
確定申告時に『住民税に関する事項』の『住民税徴収方法の選択』項目で『自分で納付』にチェックを入れて普通徴収に変更すれば、勤め先に分かるリスクを減らせます。
榎本希
副業をしていることを会社に知られたくないという人も多いかと思います。副業が会社の人に知られてしまう原因としては自分で副業をしていることを話してしまう以外に住民税額の増加によって知られる可能性があります。
そのため、住民税から副業を知られることを防ぐよう、確定申告の際に住民税の徴収は「普通徴収」を選択すると良いです。
普通徴収を選択した場合、住民税は市区町村から送付される納付書で自分で納付することになります。
確定申告をしないとどうなる?
確定申告をすべき人が故意にしなかった場合、非常に厳しい処分が下されます。そうならないように、確定申告の仕組みや情報をある程度把握しておくのが賢明です。
確定申告をすべき人がしない場合、どうなるかを詳しく見ていきましょう。
確定申告をしないと脱税に
確定申告をするとは、言い換えると『前年の所得を申告して納めるべき税金を納める』という行為です。それをしないということは『申告漏れ』、すなわち『脱税行為』になってしまいます。
法的に納税義務がある人が納税しなければ、それが故意であったのか、知らなかったのかにかかわらず、法律に反する行為であるのに変わりはありません。
確定申告の期限日までに申告をしなければ、申告漏れに対する罰則が課されることがあります。
- 『無申告加算税』
- 『延滞税』
などが該当するものです。次項で、罰則が発生する二つのケースを紹介します。
罰則が課せられる
『無申告加算税』は、確定申告書を申告期限までに提出しなかったとき、本来納付すべき額に加えて課される罰金です。無申告加算税は、納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超えるなら20%を乗じた金額になります。
税務署の指摘を受ける前に、自ら『期限後申告』をすれば、無申告加算税が5%の割合を乗じた金額に軽減されるのです。
また、申告の期限日は、納めべき税金を納める期限でもあります。期限までに完納しないときに課せられる、罰則的な税金が『延滞税』です。法定納期限の翌日から納付する日までの日数に対して、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。
この税率は、納期限の翌日から2カ月を経過する日までについて、年分ごとに違います。平成30年分は年2.6%です。納期限の翌日から2カ月を経過した日以後についても年分ごとに違います。平成30年分は年8.9%です。
榎本希
確定申告の必要があるにも関わらず、確定申告をしない場合には罰則として税金が重くなります。
・15~20%の「無申告加算税」の支払
・7.3~14.6%の「延滞税」の支払
その他、所得を少なくしたりといった隠蔽などの悪質な脱税の場合には刑事罰として最大10年以上の懲役もしくは1000万円以下の罰金(又は併科)が科されます。
まとめ
副業をする人にとって注意をすべき確定申告ですが、青色と白色があり、AとBもあります。『青色のB』が、記入は面倒でも節税効果が高いものです。
会社にばれたくない場合は、住民税を普通徴収にしましょう。また、申告を忘れると罰則があるので要注意です。副業の所得が20万円を超えた際は、基本情報をしっかりと押さえて確定申告をしましょう。