フリーランスの保険証は健康保険により異なる。手続きを確認しよう

フリーランスに転向した場合、公的医療保険の切り替えが必須です。フリーランスが加入できる公的医療保険や手続き方法について見てみましょう。加えて、退職まで使っていた保険証の返却方法や、国民健康保険の交付を受けるうえでの注意点についても考察します。

フリーランスが加入できる公的医療保険?

日本は原則的に『すべての国民が公的医療保険に加入しなければならない』とする『国民皆保険制度』が採用されており、これにより病気や怪我の際の負担が軽減されます。

当然フリーランスにも公的医療保険の加入が義務づけられますが、フリーランスが加入できる公的医療保険にはどのようなものがあるのでしょうか。

国民健康保険

会社員や生活保護受給者以外が加入対象となるのが国民健康保険です。会社を辞めてフリーランスになる場合、14日以内に最寄りの市区町村窓口にて加入手続きをとらねなりません。

加入の必要があるにもかかわらず手続きを行わなかった場合は、保険料を遡って徴収されたり、医療費が全額自己負担になったりするため、注意しましょう。

一方、納付額については市区町村によって異なり、収入や世帯人数も金額に影響します。正確な納付額を知りたい場合は、まず市区町村窓口に問い合わせるとよいでしょう。

職業別健康保険組合に加入

フリーランスが健康保険組合に加入することは不可能ですが、職業によっては、同じ種類の業種の人で構成される職業別健康保険組合もあります。自分の職業で健康保険組合が組織されている場合は、そちらに加入するとよいでしょう。

代表的なものについては、以下の通りです。

  • 全国医師国民健康保険組合連合会:医師
  • 東京都弁護士国民健康保険組合:弁護士(地域限定)
  • 薬剤師国民健康保険組合:薬剤師

加入条件や内容等は組合によって異なるため、事前の確認をおすすめします。

元の勤務先の健康保険を任意継続

会社を辞めた後も、希望すれば勤務先の健康保険に継続して加入できます。任意継続の条件は、以下のとおりです。

資格喪失日までに健康保険の被保険者期間が継続して2ヵ月以上あること。

資格喪失日(退職日の翌日等)から20日(20日目が土日・祝日の場合は翌営業日)以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること。

任意継続の加入条件について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会

保険料については、退職時の標準報酬月額に居住する都道府県の保険料率を掛けて算出されます。

ただし、退職後は会社による『保険料の半額負担』がありません。保険料は全額自己負担となることは、承知しておきましょう。

国民健康保険の保険証を入手する手順

医療機関での受診には、保険証が必要です。国民健康保険に加入した場合、保険証はどのようにもらえばよいのでしょうか。

居住地の自治体で手続き

前述のとおり、国民健康保険の加入手続きは、地域の市区町村窓口で行います。手続きの際に持参するものは、次のとおりです。

  • 健康保険等資格喪失証明書など
  • 本人確認書類
  • マイナンバーカード(通知カード)

まず、健康保険等資格喪失証明書は、会社の保険組合を脱退したという事実を確認するのに必要です。ただし、市区町村によっては離職票などでもよしとする場合もあるため、事前の確認をおすすめします。

また、本人確認書類は、運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどなら1点のみで済みますが、年金手帳や年金証書などを持参する場合は2点用意しなければならないため、注意が必要です。

さらに、国民健康保険の手続きには、マイナンバーの確認と身元証明が義務づけられています。スムーズに手続きを終えられるよう、もれなく用意しておきましょう。

保険証の受け取り

保険証の申請がスムーズに終われば、ほとんどの自治体ではその日のうちに保険証が交付されます。ただし、窓口で手続きをしたのが本人または同一世帯の家族であること、さらに、前項に示した本人確認書類のうち、免許証やパスポートなど『顔写真の入ったもの』を持参することが条件です。

また、自保険料の支払を『口座振替』と決めている自治体なら、銀行通帳や印鑑の持参も必要でしょう。

即日発行できない場合もある

市区町村によっては即日発行に対応せず、『保険証交付は基本郵送』という場合もあります。さらに、同じ郵送でも『普通郵便』を利用する自治体や『簡易書留郵便』を利用する自治体など、発送方法は様々です。

まずは最寄りの自治体に、保険証の交付方はどのように行われるか、尋ねてみることをおすすめします。

会社員からフリーランスになる場合の注意

健康保険から国民健康保険に切り替える際、『いつまで保険証が使えるのか』『保険証はどのように返却すればよいのか』と頭を悩ませる人もいるでしょう。

保険証切り替えの注意点や返却方法を紹介します。

保険証が使えるのは退職日まで

会社員として使っていた社会保険は、退職によって健康保険の資格を失った時点で失効します。つまり退職日の翌日から使えなくなるため、医療機関にかかるタイミングには注意が必要です。

中には『保険料は月単位で支払うため、月末まで使える』『新しい保険証ができるまでは使える』と失効した保険証を使う人がいますが、資格消失後にかかった医療費は、後で組合から返還を求められます。

繰り返し使用すれば『詐欺罪』が適用されるケースもあるため、退職後は速やかに保険証を返却するのがベターです。

郵送で返却する場合の手順

保険証は本来手渡しで返却するのがベターですが、諸事情あって会社に行けない場合は、郵送で返却するしかありません。ただし、適当に郵送すると未着等のトラブルが起こる可能性があるため、郵送での返却は慎重に行いましょう。

まず、郵送すると決めたら、会社に連絡し、郵送で送る旨を伝え、担当者の名前を聞きます。発送の際は担当者の名前を記し、配達記録が残る『簡易書留か普通書留』で送りましょう。

保険証の返却は『退職日から5日以内に社会保険事務所に返却する』というルールがあります。会社に面倒をかけないよう、なるべく速やかな発送が望まれます。

まとめ

会社員からフリーランスに転向した場合、健康保険は速やかに『国民健康保険』に切り替えねばなりません。退職から14日以内に必要な書類等を揃え、適切に手続きを行いましょう。

国民健康保険の保険証はすぐにもらえないケースもありますが、保険証がなくても加入手続きが済んでいれば、保険は有効です。退職日以降は、会社の健康保険を使わないよう、十分に注意してください。

生川奈美子 [監修]

株式会社アスト代表取締役。大手生命保険会社に12年勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。現在、「わくわくの明日と共に」をモットーに、子育て世代、リタイア世代のライフプラン作成や家計相談、相続相談などのコンサルタントとして活動中。また、講師や執筆も担当。2015年度金融知識普及功労者として金融庁・日本銀行から表彰を受ける。

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