フリーランスと青色申告について
1年間の所得が38万円を超える『フリーランス』は、自分で利益や税金の金額を計算した上で申告および納税をしなければいけません。
令和2年度分より基礎控除が48万円に引き上げられたため、所得が48万円以上の場合には確定申告が必要になります。
納税は国民の義務ですので、正しく処理する必要があります。『確定申告』は毎年2月から3月にかけて行われるのですが、もしそれよりも遅れた場合は『無申告加算税』が課せられることがあります。
『無申告加算税』とは、自主的に期限後申告した場合は本来納税すべきだった金額の5%、税務署から指摘を受けた場合は15~20%が加算される税金のことです。
その他、『重加算税』や『延滞税』があり、期限内に『確定申告』する必要があります。
しかし、少しでも節税したいというのが本音ではないでしょうか。そこで、10万円または65万円の控除を受けることができる『青色申告』について理解しましょう。
令和2年度分より青色申告特別控除は原則55万円です。65万円の控除を受ける場合にはe-Tax利用などの要件を満たす必要があります。
青色申告とは
『青色申告』とは『確定申告』の種類の一つです。『帳簿』に加え、『損益計算表』と『賃借対照表』が必要になります。
- 『帳簿』:日々の取引を記録したもの
- 『損益計算表』:売上額と売上にかかった金額をまとめたもの
- 『賃借対照表』:資産・負債・資本の一覧をまとめたもの
簡易的な簿記(単式簿記)による『青色申告』では10万円の所得控除を、正式な簿記(複式簿記)による『青色申告』では65万円の控除を受けることができます。
青色申告のメリット
節税をするためには『白色申告』ではなく『青色申告』をするほうがよいとされています。それは、以下のようなメリットがあるためです。
- 正式な簿記(複式簿記)による『青色申告』では65万円の控除を受けることができる
- 赤字が出た年以降に黒字になった年があれば黒字から赤字を差し引いた金額を課税対象にできる
- 「納税者の事業に従事している家族」(専従者)に支払った給与を経費として計上できる
- 30万円未満の固定資産まで一括で経費に計上できる
最も大きいメリットが、65万円の特別控除ではないでしょうか。その他、節税に有効なポイントがいくつかあるので、節税対策を行いたいのであれば『青色申告』をおすすめします。
白色申告との違い
『白色申告』とは『確定申告』の種類の一つです。『帳簿』に加え、『収益内訳表』が必要になります。『収益内訳表』に記載する主なことは以下の通りです。
- 損益計算表
- 給与の支払い
- 税理士・弁護士などへの報酬
- 売上
- 仕入れ
- 減価償却
簡易的な簿記(単式簿記)による申告を行います。かかる手間が少なくて済みますが、『青色申告』のような所得控除はありません。そのため、節税対策としては弱いとされています。
榎本希
テ令和2年度分の確定申告より基礎控除は48万円に引き上げられます。
そのため、所得が48万円以上の場合には確定申告が必要となります。
なお、青色申告特別控除については原則55万円に引き下げられましたが、e-Tax利用などの要件を満たした場合には最大65万円の控除を受けられます。
そのため、e-Tax利用などの要件を満たし、65万円の青色申告特別控除を受ける場合には48万円の基礎控除と65万円の青色申告特別控除を合わせた113万円までは非課税となるため青色申告かつe-Tax利用を行う事で節税効果が高くなります。
必要な届出と書き方
『青色申告』をするためには事前に税務署へ『青色申請承認申請書』を提出しなければいけません。手続名は、『所得税の青色申告承認申請手続』と言います。
青白申告承認申請書
『青色申告承認申請書』とは『青色申告』の承認を受けようとする場合に必要な手続きです。原則として『青色申告』をしたい年の3月15日までに提出することになります。その他、状況に合わせた提出期限があるので、念入りに確認しましょう。
税務署から承認されることによって、『青色申告』ができるようになるのですが、承認された場合は通知が来ないので注意が必要です。承認されない場合のみ通知が来ます。
開業届と一緒に出そう
先述した通り、節税対策という面で『青色申告』にはいくつかメリットがあるため、フリーランスとして開業するときに『開業届』と一緒に『青色申告承認申請書』を提出することをおすすめします。
なお、『開業届』の正式名称は『個人事業の開廃業届出書』と言います。
榎本希
青色申告特別控除を受けるためには「青色申告承認申請書」の提出が必要となります。
青色申告承認申請書の提出期間は青色申告特別控除を受けようとする年度の3月15日までもしくは年度途中開業の場合には開業日から2ヶ月以内になります。
提出忘れを防ぐためにも開業届と一緒に提出するようにしましょう。
記帳や仕訳のやり方
少し難しい印象を受けるかもしれませんが、『フリーランス』として活動するのであれば『帳簿』をつけることは欠かせません。『青色申告』であっても『白色申告』であっても『帳簿』をつけなくてはいけないためです。
そこで、記帳や仕訳のやり方を理解しましょう。
主な帳簿の種類
簡易的な簿記(単式簿記)の標準的な帳簿の種類は以下の通りです。
- 現金出納帳
- 買掛帳
- 経費帳
- 固定資産台帳
さらに、正式な簿記(複式簿記)になると、『債権債務等記入帳』を備え付ける必要があります。例えば、『債権債務等記入帳』には以下のようなものがあります。
- 預金出納帳
- 受取手形記入帳
- 支払手形記入帳
- 特定取引仕訳帳
- 特定勘定元帳
上記などの帳簿を基にして、『賃借対照表』や『損益計算書』などの決算書を作成するというわけです。
記帳の方法
記帳の基本は、取引の仕訳です。現金を支払ったり、商品を購入したり、財産が増減したことを記します。
仕訳するときは二つの側面から捉える必要があります。例えば、「500円のペンを現金購入した」という場合は「ペンという資産が増えた」ということと「500円の現金が減った」ということを二つ記録する必要があるというわけです。
資産の増加および費用の発生を計上する左側を『借方』と言い、負債・純資産の増加および収益の発生を計上する右側を『貸方』と言います。
つまり、「ペンという資産が増えること」を『借方』に、「500円という現金が減ったこと」を『貸方』に記入することになります。
事業主借などの勘定科目と仕訳
会計関連の専門用語は馴染みのないものも多いため、理解が難しい印象があるかもしれません。そこで、特に間違いやすい勘定科目である『事業主貸』と『事業主借』について紹介します。
『事業主貸』(じぎょうぬしかし)とは、『フリーランス』が事業に無関係な支出があるときに使用する勘定科目です。
『フリーランス』によっては自宅を仕事場にしている人もいるでしょう。その場合、家賃や水道光熱費などの支払額を「自宅用」と「仕事用」で分けないといけません。そのときに使うのが『事業主貸』という勘定項目です。
一方、『事業主借』(じぎょうぬしかり)とは、『フリーランス』が事業に無関係な収入があるときに使用する勘定科目です。
個人のお金を事業用のお金に移動させたり、事業用の経費を個人のお金で支払ったりしたときに使います。
『事業主貸』と『事業主借』は一見難しく感じるかもしれませんが、「事業に関するお金」と「個人に関するお金」の動きを示す勘定科目だと理解しましょう。
榎本希
テ記帳はなれないうちは勘定科目などが分からず大変な場合もあるかと思います。
開業してすぐに帳簿の作成を行うときには税理士の無料相談や、商工会議所などが行っている無料相談、税務署での無料相談などを活用すると良いでしょう。
確定申告の時期になってから慌てて行ってしまうと修正などが複雑になってしまうことも多いので、最初にやり方などを相談して正確に記帳できるようにしておくと後々スムーズに記帳を行う事ができます。
また、会計ソフトを利用することで記帳の手間や確定申告書類の作成の手間を軽減することもできます。
確定申告の流れ
最後に、『フリーランス』にとって大切な『確定申告』について紹介します。
所得や控除をもとに税額を計算
納税する税額は、所得や所得控除をもとに計算できます。ここでいう、所得とは売上から経費を引いたもののことを言います。
そして、所得から所得控除を差し引いて、そこに税率をかけて、税額を計算します。例えば、所得控除としては以下があります。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 支払った国民年金保険料や国民健康保険料
税額を計算して、『確定申告』するという流れになります。
申告書提出と納税
『決算書』と『確定申告書』を2月から3月にかけて設けられている期限内に税務署へ提出します。方法としては、「持参」「郵送」「電子申告」の三つがあります。
また、同じ期限内に納税を行う必要があります。納付書に税額を記入して、税務署や金融機関で支払うという流れです。
申告書を提出する前に納税しても問題ありません。税額が確定したら、「申告書提出」と「納税」を忘れず行いましょう。
榎本希
確定申告は毎年2月中旬から3月中旬までに行います。
確定申告の方法はe-Tax、郵送、税務署の窓口で行う場合の3種類があります。
最初の確定申告で不安がある場合には確定申告の3ヶ月前位から税務署にて税務相談が行われるため、活用すると良いでしょう。
確定申告の用紙は税務署に置かれています。
また、会計ソフトを利用している場合には会計ソフトで確定申告書類を作成することもできますので、作成した書類を提出するだけとなり手間が省けます。
確定申告の際には、基礎控除・青色申告を行う場合には青色申告特別控除・社会保険料控除・医療費控除・生命保険料控除など各種控除の金額を収入から差し引く事で税額が計算されるため、各種控除についてもしっかり計算するようにしましょう。
まとめ
『フリーランス』と『確定申告』に関することを紹介しましたが、もし不明点があれば税務署に尋ねるという方法があり、確実です。
『確定申告』の時期は人が混み合っていますが、それ以外の時期にあらかじめ不明点を確認しておくとスムーズに対応できるでしょう。
正式な簿記(複式簿記)による『青色申告』では65万円の控除を受けることができるので、『所得税の青色申告承認申請手続』を行うことをおすすめします。