フリーランスに欠かせない確定申告
フリーランスは確定申告が必要です。確定申告をしなければいけないフリーランスの所得についてと、確定申告のための日々の準備について解説します。
所得38万円以上になったら確定申告を
確定申告の義務があるのは、所得38万円以上のフリーランスです。38万円は納税するすべての人が対象となる基礎控除の金額です。所得から基礎控除を引いて0円以下になるなら、確定申告は必要ないということになります。
※税制改正により、2020年の所得から基礎控除は38万円から48万円になります。
ここで間違えてしまいやすいのが、所得と収入の違いです。所得と収入は似ていますが、税金を考える上では全くの別物ですので注意しましょう。
- 収入とはフリーランスの売上高のこと
- 所得とは売上高から経費を引いたもの
例えば、1年間の収入が100万円で経費が55万円だと、所得は45万円になります。38万円を超えていますので、このケースでは確定申告しなければいけません。
確定申告の必要がなくしない場合であっても、帳簿や領収書などの書類はかならず保存しておきます。また、確定申告をしなければいけないのにしなかったときには、無申告加算税などペナルティが課されますので注意しなければいけません。
確定申告は日々の準備が重要
確定申告をするときには、日々の帳簿づけが必要になります。帳簿とは、事業のために支払った金額や、事業で得た収入を記録し、お金の流れが分かるようにしたものです。この帳簿をもとに確定申告をすることになります。
スムーズに確定申告するためには、日々の業務として帳簿づけを習慣化することが大切です。できれば毎日、少なくとも週に1度・月に1度など、定期的に記録するようにしましょう。
帳簿づけに必要な領収書や控除証明書の管理も大切な仕事です。領収書は事業のための支出があったことを証明するために必要になります。2014年からはすべての事業者に保管義務がある書類ですから、きちんと分類し管理しましょう。
確定申告の種類によって違う必要書類
確定申告は青色申告と白色申告があり、提出書類が違います。2つの申告方法の書類の違いについて解説します。
確定申告には3種類ある
確定申告は3種類あります。
- 青色申告65万円控除
- 青色申告10万円控除
- 白色申告控除なし
青色申告は、税務署に届け出することでできる申告方法です。青色申告のメリットは、特別控除によって節税できるという点にあります。青色申告は複式簿記で記帳すれば65万円の、簡易帳簿で記帳すれば10万円の控除が受けられるのです。
(2020年分の確定申告より青色申告控除が変わります。従来のままの複式簿記だと、控除額が65万円から55万円になります。65万の控除を受けるためには電子申告または電子帳簿保存が必要です。2019年分の確定申告については記載のとおりで良く、2020年分の確定申告は来年なのでまだまだですが、すでに2020年が始まっているので、65万の控除を受けたい人で電子帳簿にする人は「国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の承認申請書」を提出したりと、準備が必要です。)
白色申告は、青色申告の届け出をしない事業者が行う申告方法です。白色申告は簡易帳簿で記帳します。ただし、控除がないことに注意しなければいけません。2014年からは青色申告と同じように書類の保管義務がありますので、10万円控除の青色申告との手間の差はそれほどないのが実情です。
青色申告と白色申告で異なる書類は1つ
青色申告と白色申告では提出する書類に違いがあります。ただし、違うのは1つだけです。以下の3つの書類は、青色申告でも白色申告でも、同じようにそろえましょう。
- 確定申告書B
- 各種控除の書類(社会保険料控除・生命保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・医療費控除・地震保険料控除・雑損控除・寄附金控除)
- 源泉徴収票(給与所得がある場合)
青色申告に必要な『青色申告決算書』と、白色申告に必要な『収支内訳書』について解説します。
青色申告に必要な青色申告決算書とは
『青色申告決算書』は青色申告で確定申告するときに必要な書類です。事業でどれだけの経費をかけて、どれだけ売り上げたかを記入します。
全4ページでできている『青色申告決算書』は、収入と経費を書き入れる『損益計算書』と『損益計算書の内訳』、期末時点での資産・負債を書き入れる『貸借対照表』からなります。
『青色申告決算書』は、税務署に取りに行くか、国税庁のホームページからダウンロードして作成します。必要事項をすべて記入したら、確定申告書と一緒に提出しましょう。
白色申告に必要な収支内訳書とは
『収支内訳書』は白色申告で確定申告するときに必要な書類です。『収支内訳書』には、収入と経費と、その2つから計算できる所得を記入します。経費を記入するときには、売上や仕入・打合せのための交通費・電話やインターネットなどの通信費など、漏れなく記載することが重要です。
『収支内訳書』の書類は、税務署で受け取るか、国税庁のホームページからダウンロードします。漏れなく記載したら、確定申告書と一緒に提出します。
提出しないけど確定申告に必要な書類
確定申告に使う書類は、提出が必要なものと、提出しなくても構わないものがあります。確定申告に必要だけれども提出しなくていい書類にはどのようなものがあるのでしょうか。解説します。
提出不要だが、保管が必要な書類
確定申告のときに提出する必要がない書類でも、保管しておかなければいけないものがあります。青色申告決算書や収支内訳書を作るときに必要な、帳簿・請求書・領収書などがそうです。
- 法定帳簿(収入・必要経費を記帳したもの):7年間の保管義務
- 任意帳簿(業務に必要な法定帳簿以外の帳簿):5年間の保管義務
- 決算のために作った書類:5年間の保管義務
- 請求書・納品書・送り状・領収書などの書類:5年間の保管義務
青色申告のときはもちろん、白色申告で確定申告するときにも、書類の保管が義務づけされています。分かりやすいよう分類して、かならず保管しておきましょう。
支払調書は提出不要
『支払調書』とは、報酬を支払う事業者が税務署へ提出する書類です。源泉徴収額が記載されています。そのため、確定申告書と一緒に提出すれば、所得税を支払っていることの証明になるのです。
しかし『支払調書』はかならず提出しなければいけないものではありません。確定申告書に添えられていない場合でも、問題なく確定申告はできます。なぜなら、報酬を支払う事業者がフリーランスへ『支払調書』を送ることは義務づけられていないからです。
『支払調書』を送るか送らないかは、事業者に任されています。そのため『支払調書』が届いていない事業者がいたとしても、あせることはありません。源泉徴収額がきちんと分かっていれば問題ないのです。
領収書はレシートでもOK
経費を処理するときには領収書がいりますが、かならず領収書でなければいけないというわけではありません。領収書・レシート・出金伝票のどれかがあれば大丈夫です。
そのため、レシートが発行されれば、会計のときにわざわざ領収書を手書きしてもらわなくていいのです。また、領収書がないから経費にできない、ということもありません。
レシートも領収書ももらえないときには、出金伝票で対応します。例えば、取引先への慶弔見舞金です。出金伝票を作成し、招待状やお礼状とともに保管しておきましょう。また、電車やバスなどの交通費は、一定期間の料金を1枚にまとめて書いておきます。
青色申告をするなら事前の申請も忘れずに
青色申告は事前の申請が欠かせません。かならず申請しておきましょう。
提出期限に注意したい、青色申告承認申請書
青色申告をするためには『所得税の青色申告承認申請書』を提出しなければいけません。用紙1枚なのですぐに書けますし、難しいことは何もないのです。しかし、1つだけ気をつけなければいけないのが提出期限です。
- 1月1~15日に新規開業:3月15日まで
- 1月16日以降に新規開業:開業日から2ヵ月以内
- 白色申告から青色申告に切り替える:青色申告をする年の3月15日まで
提出期限を過ぎると白色申告で確定申告することになります。忘れずに『所得税の青色申告承認申請書』を提出しましょう。
まとめ
フリーランスは所得38万円以上になると、かならず確定申告しなければいけません。そのときに必要なのが日々の取引を記録した帳簿と、帳簿をつけるための領収書などの書類です。正しく確定申告するためにも、必要な書類を漏れなくそろえるようにしましょう。