源泉徴収って?
源泉徴収は所得税を効率的に徴収するための制度です。フリーランスの源泉徴収について解説します。
支払い側がする納税制度のこと
源泉徴収とは、所得税の納税者本人のかわりに、給与や報酬を支払う事業者が税金を納める制度です。給与や報酬からあらかじめ計算した所得税分を差し引いて納税します。フリーランスへ支払われる報酬は、源泉徴収税額が引かれた金額です。
税金の計算と納税は、納税者が自分の所得を計算して申告する『申告納税方式』で行われています。しかし全ての納税者が確定申告をしていると、申告する方も、それを処理する税務署も大忙しです。そこで、納税者と税務署の手間を省き、簡単に納税できるようにするため、源泉徴収ができました。
源泉徴収が発生する仕事
サラリーマンの場合には必ず源泉徴収が行われます。しかし、フリーランスの場合には、源泉徴収される仕事とされない仕事があります。この違いを把握し、確定申告で税金を納め過ぎてしまわないようにしましょう。
源泉徴収の対象にならない場合もある
フリーランスとして仕事をしている場合、報酬を支払う事業者のタイプによって、源泉徴収されるかどうかに違いが出てきます。
法人からフリーランスへ報酬を支払う場合には、法人には源泉徴収が義務づけられています。しかし、フリーランスからフリーランスへ報酬を支払うなど、源泉徴収がされない場合もあります
源泉徴収は確定申告にも必要ですので、取り引きのある事業者が、源泉徴収をするかどうか把握しておかなければいけません。また、仕事内容によっても、源泉徴収の対象になるかどうかが定められています。源泉徴収の対象となる仕事は下記の通りです。
- 原稿料や講演料
- 弁護士・公認会計士・司法書士などへの報酬
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- プロスポーツ選手やモデル・外交員などに支払う報酬
- 芸能人や芸能プロダクションを行っている個人に支払う報酬
- ホステス・コンパニオンなどに支払う報酬
- プロ野球選手の契約金など、役目を果たす約束で支払われる契約金
- 広告宣伝のための賞金や、馬主に支払う競馬の賞金
出展:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
計算方法を確認しておこう
源泉徴収の計算方法は、報酬の支払い金額によって違います。報酬が100万円以下の場合には、単純に10.21%をかけて計算が可能です。100万円を超える場合には、100万円以下の部分に10.21%をかけた金額と、100万円を超える部分に20.24%をかけた金額を合計します。
- 100万円以下:源泉徴収税額=支払い金額×10.21%
- 100万円を超える部分:源泉徴収税額=(支払い金額– 100万円)×20.42%
例えば、報酬が20万円の場合には、100万円以下なので、20万円×10.21%=2万420円となります。そのため、20万円の報酬から源泉徴収されて受け取る報酬金額は、17万9580円です。
報酬が150万円の場合には、100万円以下の部分は、100万円×10.21%=10万2100円。100万円より多い部分は、(150万円-100万円)×20.42%=10万2100円。これらを合計し、源泉徴収は20万4200円です。フリーランスに支払われる報酬は129万5800円となります。
確定申告時には源泉徴収票で額を確認
確定申告で納税額を決定するときには、源泉徴収額の確認が必要です。そのため、源泉徴収額の確認ができる『源泉徴収票』を必ずもらうようにしましょう。
源泉徴収票とは
源泉徴収票とは、報酬を支払う事業者が発行する書類です。報酬から差し引いた源泉徴収の金額が記載されています。事業者は源泉徴収を行うと、源泉徴収票を作成して税務署へ提出しなければいけません。
同時に、会社員の源泉徴収の場合には、源泉徴収票を渡すことが義務づけられています。しかし、フリーランスの場合には、源泉徴収票を渡すことが義務づけられていません。そのため、源泉徴収されているからといって、必ずしも源泉徴収票をもらえるとは限らないのです。
手元にない場合は発行のお願いをしよう
フリーランスで仕事をして、報酬から源泉徴収されたのに手元に源泉徴収票がないという場合には、必ず発行してもらうようお願いしましょう。源泉徴収額は正確な確定申告のために必要な情報だからです。確定申告で所得税を払い過ぎないためにも、必ず正確な源泉徴収額を把握しましょう。
手元に源泉徴収票がない場合には、支払われた報酬額から源泉徴収額を計算することもできます。しかし、その手間は大きなものです。そのため、一目見て源泉徴収額が明らかな、源泉徴収票をもらえるようにお願いしておきましょう。
源泉徴収額の申告をしないとどうなる?
正しく確定申告するためには、源泉徴収額の申告をします。もしも、源泉徴収額の申告をしなかった場合には、どうなるのでしょうか。
所得税との二重支払いで損になる
確定申告の時に源泉徴収額を申告しなかった場合、所得税を二重に払うことになります。源泉徴収として既に所得税を前払いしているのに、さらに報酬に所得税を課税してしまうからです。このままでは、所得税の払い過ぎで、損してしまいます。
また、所得の金額によっては、源泉徴収された所得税の一部や全てを返還してもらえるということもあります。その場合には、本来であれば支払う必要のなかった所得税を支払ってしまう、ということになり、やはり損です。
そのため、報酬から源泉徴収されている場合には、源泉徴収額を忘れずに確定申告書に記載しておかなければいけません。
還付の請求期間は5年まで
源泉徴収額を記載せずに確定申告してしまった場合、5年以内であれば還付の請求(更生の請求)ができます。手続きをすれば、納め過ぎてしまった所得税を払い戻ししてもらえるのです。そのため、間違えて源泉徴収額を記載していなかった場合には、税務署で手続きをしましょう。
確定申告は時期が決まっていますが、更生の請求いつでもできます。間違いに気がついたら、できるだけ早めに手続きをしに、税務署へいきましょう。
更生の請求に必要な書類は、源泉徴収額が分かる書類と、間違って申告してしまった確定申告書の控えです。他には、印鑑・還付金を振り込む口座の通帳を持っていきます。税務署へついたら、更生の請求がしたいと職員へ伝えれば案内してもらえます。
確定申告がスムーズになる請求書の書き方
スムーズな確定申告のコツは、請求書に消費税と源泉徴収額を記載することです。フリーランスの手間を減らす請求書の書き方について解説します。
消費税は別に記載しよう
請求書を作成するとき、消費税は別に記載します。なぜなら、源泉徴収は内税か外税かで、課税される金額が違うからです。
内税の場合には、消費税を含む金額全てが源泉徴収の対象になります。一方、外税の場合には、消費税を引いた金額が源泉徴収の対象です。
そのため、消費税が内税か外税か分かりやすいように、消費税を別に記載して請求書を作成しましょう。源泉徴収額の間違い防止になります。
源泉徴収額を記載しておこう
請求書に源泉徴収額を記載しておくと、報酬から源泉徴収されているかどうかが一目瞭然です。逆に、請求書に源泉徴収額が書いていない場合、どのように処理されているかが分かりづらくなってしまい、間違いのもととなります。
請求書を作るときに源泉徴収額を書いておけば、確定申告の時の間違いや、所得税の払い過ぎを防げるのです。このように、確実に確定申告ができていれば、更生の請求をする手間もなくなります。
まとめ
フリーランスの報酬は源泉徴収されるケースとされないケースがあります。源泉徴収されている報酬の場合には、確定申告で所得税の二重払いにならないように注意しましょう。源泉徴収は所得税の前払いなので、申告しないとさらに所得税を支払うことになってしまうのです。
間違えて所得税を払い過ぎてしまわないためにも、消費税や源泉徴収額を記載した請求書を作り、確実に手続きができるようにします。源泉徴収を確実に申告し、損をしない確定申告をしましょう。