請求書に源泉徴収額は記載すべき?
源泉徴収とは、給与や報酬を支払う人が、事前に支払金額から『所得税』や『復興特別所得税』をあらかじめ差し引く制度です。
フリーランスの場合、源泉徴収の有無は確定申告時に大きく関わってきますが、このほか請求書発行の際も、源泉徴収の扱いについて考慮する必要があります。
フリーランスが請求書をクライアントに送る場合、源泉徴収についてはどのように考えればよいのでしょうか。
源泉徴収対象かを確認
フリーランスが得る『報酬』も源泉徴収の対象となります。
ただし、すべての仕事に該当する訳ではないため、まずは自分の業務の報酬が源泉徴収対象か否かを確認しておく必要があるでしょう。具体的な内容については、国税庁の『No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは』で確認可能です。
上記によると、フリーランスに該当しそうなものとしては、以下のようなものがあります。
- 原稿料
- セミナーなどの講演料
- デザイナーのデザイン料
- モデル・芸能人などの出演費用
源泉徴収対象となる報酬を得る場合は、クライアントに源泉徴収をしてもらわねばなりません。
対象の場合、記載したほうが親切
クライアントの利便性を考えれば、業務報酬が源泉徴収対象になる場合は、源泉徴収額を記載した方が親切です。
ただし、クライアントが1人で仕事をするフリーランスなら、『源泉徴収義務者』に該当しません。クライアントは支払金額から源泉を徴収する義務がないため、源泉徴収額の記載は不要でしょう。
榎本希
そもそも源泉徴収とは、報酬を支払う側が予め支払う報酬から納めるべき税金を差し引いて支払う制度です。
請求する報酬については全てにおいて源泉徴収が必要ではありません。
源泉徴収が必要な報酬でフリーランスが多いのは「原稿料」「デザイン料」「講演料」などです。
また、仕事を依頼する側がフリーランスである場合にも源泉徴収の必要はありません。
請求書に記載する際には、依頼主が源泉徴収の必要がある事業者であるか、源泉徴収が必要な報酬であるのかを確認した上で必要な場合に記載するようにしましょう。
源泉徴収額の計算方法と書き方
請求書に源泉徴収額を記載するには、計算方法や記入の仕方を確認しておく必要がありまます。それぞれについて、詳しく見てみましょう。
請求額で税率が異なる
源泉徴収額は、報酬によって計算式が変わります。
まず報酬が100万円以下の場合、徴収税率は『10.21%』です。そのため、100万円の報酬を受けた際は以下のような計算で式源泉徴収額を算出します。
- 100万円×10.21%=10万2100円
さらに、100万円を超えると、超えた部分の徴収税率は『20.42%』となります。そのため、報酬が200万円だった場合の源泉徴収額は以下の計算で算出可能です。
- (200万円-100万円)×20.42%+10万2100円=30万6300円
100万円を超えた部分にはかかる負担が大きくなるため、注意が必要です。
請求書に記載すべき項目
請求書は取引の証明となるもののため、内容や金額は正確かつわかりやすく記す必要があります。有効な請求書を作成するには、以下の4項目は必ず記載しておきましょう。
- 小計
- 消費税
- 源泉徴収
- 合計
まず小計とは、報酬そのものの金額です。10万円で契約を結んでいたなら、『100000』と記載します。
そして次の消費税は小計の10万円に対する消費税のため、『8000』です。
さらに源泉徴収は、先ほどの式で計算した、源泉徴収で引かれる額を記載します。つまりこの場合、『10万円×10.21%=10210円』と計算できるため、金額は『△10210』です。
そして最後の合計は、上記のすべてを合わせた額を記載します。この場合は『100000+8000-10210』となり、『97790』が合計です。
それぞれの金額や合計についてはきちんと複数回確認したうえで請求書を送付し、トラブルを防ぎましょう。
請求書のテンプレートを用意しておくと便利
大切な請求書の記載ミスや記入漏れを防ぐには、請求書のテンプレートを用意しておくとよいでしょう。
請求書には上記の4項目のほか、日付記入欄、自分の住所や名前、備考欄などを事前にプリントしておくと、見栄えのよい請求書となります。また、報酬の振込先についてもわかりやすく記載しておけば、振り込みミスもありません。
榎本希
源泉徴収の金額は報酬により異なりますが、報酬が100万円以下の場合には10.21%、100万円以上の場合には(支払われる額-12万円)×20.42%となっています。
書き方については「小計」「消費税」「源泉徴収額」「合計」それぞれを記載するようにしましょう。
金額については間違いがないようにしっかり確認をした上で請求書の作成をするようにしましょう。
計算時ここに注意
源泉徴収額を算出する際、気をつけたいのが経費と消費税の扱いです。それぞれについて注意すべきポイントを紹介します。
交通費等の経費も源泉徴収の対象
仕事上必要となった交通費や宿泊費も源泉徴収の対象となります。
クライアントが『車代』などとして渡したお金のほか、交通費や宿泊費として請求したものも、実費であれば源泉徴収の対象です。ただし、クライアントが交通手段や宿泊先を用意して、直接の支払を行った場合はこの限りではありません。
消費税には課税されない
消費税は外税にするか内税にするかで、源泉徴収対象になるか否かが決まります。
報酬を内税で上げている場合は、消費税分も含めた報酬が源泉徴収対象です。しかし、消費税を含めない金額を上げている場合は、消費税は源泉徴収の対象とはなりません。
例えば報酬が10万円ある場合、請求書の報酬を内税で上げると源泉徴収額は次のようになります。
- 108000×10.21%=11026円(1円未満切り捨て)
一方、消費税を外税とした場合は次の通りです。
- 100000×10.21%=10210円
1件分で見ればわずかな差ですが、積もれば大金となります。契約を結ぶ際は『外税』であることを確認しておきましょう。
榎本希
消費税の取り扱いにより源泉徴収額は変わってきます。
消費税を内税とした場合は消費税分についても源泉徴収が必要になります。
請求書を作成する際にはクライエント側の消費税の扱いについても確認をするようにしましょう。
また、交通費や宿泊費などの仕事をするのに実費として請求した分についても源泉徴収が必要であることも忘れないようにしましょう。
まとめ
フリーランスとして働く人の業務は、源泉徴収の対象であることがほとんどでしょう。請求書を発行して送付する際は、源泉徴収額を記載して請求すると、あとの会計処理がスムーズです。
正しい計算式を承知し、間違いのない請求書を作成しましょう。