会社員にとって社会保険とは
社会保険とは、公的な保険制度の総称で、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険が該当します。
会社員が副業した場合の社会保険について考察します。
会社員が対象の社会保険
社会保険は前述の5種類がありますが、会社員にのみ該当するのが『厚生年金保険』『雇用保険』『労災保険』です。
まず厚生年金は、国民年金に上乗せされる公的年金です。積立額に応じて年金が支給されるため、老後の生活への備えとなります。保険料額は給与ごとに算出され、会社がそのうちの半分を負担します。
次の雇用保険は、労働者が失業などで働けなくなった時のための保険です。毎月の掛け金は会社と従業員で一定金額ずつを負担します。
そして最後の労災保険は、業務中や通勤中に怪我などを負った時のための保険です。こちらは全額会社が負担するため、保険料の増減には関係しません。
副業先も社会保険の対象なら二重加入が必要
副業が以下の条件すべてに該当する人は、その会社でも社会保険の加入が求められます。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が1年以上見込まれる
- 月額賃金が8.8万円以上
- 学生ではない
- 常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤務
2016年にパートやアルバイトの社会保険加入条件が引き下げられ、正社員でなくとも社会保険に含まれねばならない人が増加しました。
副業としてアルバイトを始める際は、社会保険の加入義務についても確認しておくことをおすすめします。
雇用保険は1社しか加入できない
複数の会社で働いている人については、厚生労働省のHPに次のような記述があります。
同時に複数の会社で雇用関係にある労働者(それぞれの会社で雇用保険の加入要件を満たす場合)については、生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある会社でのみ加入していただくこととなります。
Q&A~事業主の皆様へ~「Q6 複数の会社で働いている者の雇用保険の加入はどうすればよいのでしょうか。」
つまり、会社員の雇用保険は本業の会社での加入が求められます。
榎本希
社会保険とは「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労働者災害補償保険」の総称です。
社会保険は加入要件を満たしている場合には副業であっても加入義務があります。
この場合、健康保険と厚生年金保険の複数加入は各自でメインとなる会社を選択する手続が必要になります。健康保険証も同様にメインとなる会社を自分で選択し、届出た会社の健康保険証が発行される事になります。
また、雇用保険は二重加入はできずメインとなる会社でのみ加入することとなります。
副業先で社会保険に加入する影響は?
社会保険の加入条件にすべて該当した場合、副業先でも加入義務が発生します。この場合、本業を別に持つ会社員にはどのような影響があるのでしょうか。
社会保険料が上がる
副業・本業で社会保険に加入する場合、それぞれの給料を合わせた額から社会保険料が算出されます。保険料は2社ぶんとなり、本業一本の人よりも保険費用が多くなるでしょう。
このように2カ所で社会保険料を納めねばならなくなった場合は、その事実が発生した日から10日以内に『被保険者所属選択・二以上事業所勤務届』を年金事務所に提出し、社会保険料の訂正を行わねばなりません。
年末調整は1箇所でOK
年末調整は、本業の会社でのみ行うため、副業先での年末調整は不要です。
年末調整とは、事業者が従業員のその年の源泉徴収を正しく計算し、所得税を確定させる仕組みを指します。税の精算は扶養人数や保険料控除証明書などを元に行われるため、払いすぎていれば税の還付があるでしょう。
副業を持つ会社員の場合は2カ所で源泉徴収されていることになりますが、年末調整はどちらか一つの会社でしかできません。多くの場合はより収入の多い本業の会社で行うのが一般的なため、副業先での年末調整は不要なのです。
確定申告は必要
副業先での年末調整が不要とはいえ、年末調整されていない給与収入の金額と、給与収入ではない副業による所得金額の合計が20万円を超えている場合は、確定申告が必要です。
つまり、会社員が副業先で年20万円以上の収入を得ているなら、確定申告しなければなりません。
確定申告を行う際は副業の源泉徴収票だけではなく本業の源泉徴収票も必要となるので、きちんと準備しておきましょう。
確定申告では1月1日~12月31日までの所得額を計算し、必要に応じて還付を受けたり納税したりします。申告期間は2月~3月半ばのため、確定申告のスケジュール等を確認しておきましょう。
榎本希
複数の会社で社会保険に加入した場合には社会保険料はすべての会社で発生することになります。しかし、一般の従業員である場合に複数の会社で週の所定労働時間及び月の所定労働日数が正社員の4分の3以上を満たすという社会保険の加入条件を満たす場合はあまりないでしょう。しかし、役員等の場合には会社とは委任関係にあるため一般従業員とは要件が異なるため、複数で社会保険に加入するケースもあるでしょう。
また年末調整は1カ所の勤務先で行う事になります。
自営業の副業をおこなう場合
会社員の副業収入が自営業等によるもので、『給与収入』では無い場合、社会保険料の負担は変わりません。
副業に自営業を選択した場合の保険料について見てみましょう。
収入が増加しても社会保険料は増えない
会社員が自営業で副業しても、『被保険者種別』が変わらないなら、社会保険料は増加しません。
社会保険には1~3号の被保険者種別があり、自営業者は1号、会社員は2号に該当します。
国民健康保険法6条には2号保険者を1号保険者としない旨明記されており、副業によって会社員の保険者種別が変わることはありません。健康保険も厚生年金も『2号』として計算されるため、社会保険料額はこれまでと同じです。
ただし住民税は増加する
社会保険両が変化しない一方で、住民税は増加するかもしれません。
確定申告によって所得税額が決定すると、その税額は住民税を扱う市区町村に通知されます。住民税額は副業を含めた金額で算出されるため、副業の種類にかかわらず、収入が増加すれば税額が高くなるのです。
ちなみに、会社員の住民税については、会社が給与から差し引いて支払います。こっそり副業をしようとしてもここで発覚する確率が高いため、副業を始める前に、副業の可否を確認することをおすすめします。
榎本希
会社員や社会保険に加入しているパートの人が副業として個人事業主となった場合、社会保険については勤務先にて加入しているため、特に手続は必要ありません。
保険料についても増加はしません。
また、副業収入が20万円以下である場合には確定申告の義務はありません。
しかし、住民税については申告の必要があるため、住民税については増加の可能性があります。
また、副業での所得が290万円以上ある場合には所得税の他に個人事業税が発生します。
まとめ
給与を復数社から得る場合、事業規模や労働時間によっては、社会保険料の負担は増加します。
ただし、今以上保険料を増やしたくない人は、副業に自営業を選択すれば、支払うべき額は変わりません。保険料負担が増えると受け取るお金が減るため、社会保険が適用されないように会社を選んだり時間を調整したりすることが重要です。
また、年末調整されない副業の収入については、年度末の確定申告が必須です。源泉徴収票を準備して、もれなく申告してください。